コメルツ銀行口座開設・口座情報の変更(Ein Konto eröffnen, ändern)
まだ右も左もよくわからない頃に、マンハイムのGoethe Instituteでドイツ銀行(Deutsche Bank)の方が受付に来ていましたので流れのままに口座を開設しました。それはそれで大変助かったのですが、Aktivkontoという口座で毎月4.99ユーロの手数料がかかります。ちょっと高いなーと思っているところに、コメルツ銀行(Commerzbank)の「今なら手数料無料の口座(Kostenloses Girokonto)を開くと、150ユーロプレゼント!3月末まで期間限定!」という広告に心を動かされ、重い腰を上げることにしました。
1.口座の開設
手数料無料の口座はオンラインバンキングを始め、いろいろあるのは知っていましたが、オンラインバンキングは電話対応が中心らしく、トラブると面倒だなと思って敬遠していました。ドイツって、”一応可能”になってればいいだろみたいなことが多く、電話したら100分お待ちくださいとか、連絡したら7か月後に封書で返事が来るとか結構ザラです。電話回線が全国で一本しかなくても、メールの返信に一か月かかろうとも「問い合わせには電話・メールで対応しています!心配ご無用!」というのはウソにあたらないので、平気で言います。ちゃんとしているところはメールの自動返信に72時間以内に必ず返信します!とか書いてあったりします。今回はCommerzbank系のオンラインバンク"comdirect"ではなく、普通のコメルツ銀行の普通の口座のキャンペーンなので参加しようと思いました。
コメルツ銀行の無料口座自体は前からありましたが、毎月最低1200ユーロの入金がないといけないとか条件がありました(2017年4月現在)。大体はクリアーしそうですが、例えば海外学振とか(将来もしもらうことになれば)は3か月に一度の支給だし、条件が満たされるようにいちいち調整するのもめんどくさいなと思っていたところです。今回のキャンペーンの条件を見ると、
Leistungen Preis Kontoführungsgebühr (monatlich)1 0,00 Euro Mindesteingang entfällt bei Eröffnung in einer unserer Filialen Ausführung von beleglosen Inlands- und SEPA-Überweisungen inklusive Ausführung von beleghaften Inlands- und SEPA-Überweisungen 1,50 Euro pro Stück Daueraufträge inklusive Kostenlos Bargeld an 9.000 Geldautomaten der Cash Group2 inklusive ec-Karte (Commerzbank Girocard) inklusive 1 Kostenlos nur bei privater Nutzung und belegloser Kontoführung, sonst 1,50 € je Inlands-/SEPA-Überweisung. Startguthaben 150 € erst nach 3-monatiger Kontonutzung (mind. 5 monatl. Buchungen über je 25 € oder mehr) und Kundenkompass-Beratungsgespräch nur, wenn seit 24 Monaten kein Konto bei der Commerzbank besteht.Angebot freibleibend, längstens bis 31.03.2017. Angebot gilt nicht für Mitarbeiter der Commerzbank.
だそうです。手数料は毎月無料、毎月(?)の入金(Mindesteingang)は必要なさそう。銀行に行って振込用紙で振り込むのだけは有料で1.5ユーロだそうですが、今まで全部ネットでできましたので、おそらく大丈夫でしょう。25ユーロ以上の取引を、毎月5回以上、最初の3か月間に行うと口座を使っているとみなされ、150ユーロをプレゼントでくれるらしいです。口座を開くだけで150ユーロもらえるなんてなかなか日本じゃ信じられませんが、、、昨年末は確か200ユーロのキャンペーンもやってました。こちらは逃しましたが。
追記)4月19日現在だと、上記に加え、さらに通常年会費39.99ユーロのMasterCard Classicも無料でついてくるそうです。こっちの方がよりお得だったかも。まあ、ドイツ国内なら大体ECカードで事足りますが。
電話して予約を取るように広告では書いてありますが、電話はおっくうなので、近くのコメルツ銀行の店舗にアポなしで飛び込みました。
「予約ないけど、口座開きたいんですが、、、」
「そうねえ、もうちょっとしたら次のお客さんが来るけど、書類全部持ってる?なら、いまちゃっちゃっとやっちゃおうか」
ということで取り次いでくれました。ドイツ銀行に口座持ってるんだけど、広告見て乗り換えようかなと思いましてと、パスポート、滞在許可証、フンボルト財団の奨学金支給書を渡しました。どの国で課税されてるの?と聞くので、日本では課税されてないです。この金額の奨学金で研究用の場合はドイツでは非課税らしいですと答えましたが、すぐにはわからなかったようで同僚に確認をとってました。後で納税者番号教えてねというので、Persönliche Identifikationsnummerを後でメールしました。やれやれ、どこも口座を開くの大変になってきたなあ。30分ぐらいの手続きがあって、さあ帰れるぞと思ったところで、「Kundenkompass」という、ファイナンシャルアドバイス的な話もありました。150ユーロをもらうためにはこれが必要だったらしく、、、いろいろ大変。子供はお金がかかるからためなきゃだめよというのが結論じみたものですが、無い袖は振れないわけでして。。。最後に大きいファイルをくれて、契約書類とかを綴じて終了です。
「後日、顧客対応の調査があるかもしれません。なにかご不満の点はありませんでしたか?」
と最後に聞かれましたが、よっぽど評価に響くのですかね?基本はドイツ語でこなし、困ったときだけ英語に頼りました。丁寧に応対していただけたので、「問題ないですよ、とても満足しています」と答えました。オンラインバンキングは携帯電話のSMSを使ったワンタイムパスワード制(iTAN)のようです。携帯電話なくさないようにしないとなあ。。。ドイツ国内にいるときはこれで問題ないですが、日本に帰ったらトラブるかもなので(日本の携帯番号のSMSに、今のところ対応してないようです。)、Photo-Tanというスマホを使った認証に帰国前は替えようっと。
追記)2018年3月に通知が来て、5月からはSMS認証は一回当たり9セントの手数料を取るので、Photo-Tanを推奨しますよとのこと。せっかくなのでphotoTanもできるように変更しました。ログイン後のCommerzbankのページから「verwaltung」「Tan-verwalten」と進み、photoTanを選んで、アクティベートします。この時点ではまだ使えず、二三日後にカラフルなバーコード(Aktivierungsgrafik)が印刷された紙が自宅に届きます。そこで、登録したいスマホ(iPadなども可。)にCommerzbankのAppをインストールして、登録作業はまず郵送で来たバーコードを読み取り、次にオンラインバンキングのページでphotoTanのところでパソコンに表示されたバーコードを読み取ると数字が表示され、それをパソコンで入力して認証完了します。以降、振り込みなどの時にはそれぞれカラフルなバーコードが表示されますので、それを登録したスマホのAppで読み取ってワンタイムパスワードに変換し、それを入力すると振り込まれます。まあ、認証がしっかりしているのはよろしんですが、今までスマホ一台で送金できたのに、自分のカメラじゃ自分の画面を撮影できないので、スマホのAppで読み取るためにはもう一台バーコードを表示する機器(パソコンとか)がないと振り込めなくなってしまいました。。。innovativen Sicherheitstechnikと謳ってますが、そんなに便利じゃないと思うぞこれ。近頃の若者はスマホ一台で何でもやるんだし。。。 追記終了)
その後、一週間以内に、オンラインバンキング用のログインパスワード、オンラインバンキング用のログインID (Teilnehmernummer)、オンラインバンキング用のiTANの活性化コード、キャッシュカード(Girocard)用の暗証番号、キャッシュカードがすべて届きました。なかなか素早い。
オンラインバンキングは英語にも対応しており、特に難しいところはなかったです。キャッシュカード用の暗証番号はコメルツ銀行のATMで変更できます。出入金明細は、コメルツ銀行の機械で印刷できるようでA4サイズで出てきます。これもなかなか面倒で、定期的に印刷しないと、そのうち手数料を取られて家に郵送されるらしいです。オンラインバンキングのページでMein Postfachでオンライン明細に切り替えました。なお、入出金はCashグループのATM(Deutsche Bank, Postbankなど)で無料でできます。どこの町にも大体いいところにあるので、便利です。
2.口座情報の変更
口座が開設できたので、今度はあちこちにお知らせしないといけません。コメルツ銀行の方曰く、どうしてもというなら私どもももちろんお手伝いしますが、大概は皆さんでやられた方が早いですよとのこと。口座変更しなのでよろしく!みたいなテンプレートのお知らせも何枚かいただきましたが、今のところ使ってません。
受け取り
フンボルト財団にはメールで変更をお知らせしました。口座名義人、IBAN、BIC、銀行名があれば十分のようです。
子供手当(Kindergeld)はFamilienkasseにお手紙で口座情報変更をお知らせします。変更届(Veränderungsmitteilung)は下記からオンラインで入力、印刷できます。Kindergeld beantragen und Veränderungen mitteilen.を選んで、いくつかJaで進み、「Ich möchte Veränderungen in meinen persönlichen Verhältnissen mitteilen. 」を選んで、入力していきます。最後は印刷に加え、オンラインでの申請もできるようですが、ICチップによる認証か、パスワードなどによる本人認証が必要なので、面倒そうなので印刷かなあ。
書類のPDFファイルもあります。今回はこのPDFファイルに直接入力しました。Veränderungsmitteilung (KG45)です。
追記)数日して、署名が違いますのでもう一度やってくださいとのこと。漢字のサインか、アルファベットのサインか。。。あんまり使い分けない方がいいな。メールでの受け付けは署名したものをスキャンしてあるものに限るとの但し書きがあるので、
Familienkasse-Baden-Wuerttemberg-West.F12@arbeitsagentur.de
にその通りメール送信。返事は何も来ませんでしたが、新しい口座にちゃんと振り込まれました。
支払
忌まわしきO2は、オンライン上で口座情報を変更できました。こういうのだけは、、、全く。。。
電気はHeidelberg StadtwerkeのWebサイトから書類を落として郵送で送りました。
https://www.swhd.de/sepa-lastschrift
Erteilung eines SEPA‑Lastschriftmandats für SEPA‑Basislastschriftenという書類です。こちらは対応が早く、変更受け付けましたとのお知らせがすぐに届きました。
保険の支払いはDaniel Weistの営業担当者にお知らせしました。
当分はこれで様子見です。トラブルなく移行できたようなら、ドイツ銀行に行って口座閉鎖の手続きをとります。それはまた次のお話。
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手数料無料口座にしたもう一つの理由は、将来帰国したあとも、口座をしばらく置いとけるのかなという点です。帰国間際はいろいろ支払いもまだ残っているだろうし、かといって口座を置いとくと毎月手数料をひかれ続け、挙句の果てに手数料を請求されちゃいそう。ドイツの銀行は支払いにはとりあえず応じ、あとで利用者から金利も含めて取るシステムらしいです。さすが金貸し。それなりにお得になったかなとは思っていますが、渡欧当初に最初からでは難しかったと思います。こういうキャンペーンはずっとやっているわけではないですし、過去24か月以内にコメルツ銀行で口座を持っていた人は応募できないという但し書きもありました。かといって銀行口座を早く開かないと、いろんなところで支障をきたすし。とりあえずどこかで口座を開いといて、あとで事情が分かってきたらよさそうなところに乗り換えるのがよいではないでしょうか。まあ、しょせんはした金ですが。
追記)はした金(?)の150ユーロのプレゼントが半年たっても振り込まれませんでした。銀行の窓口まで行ったところ、何かの手違い(?)だったようで翌日に振り込んでくれました。そういうこともあるみたいです。
コンサート(2) Konzert
引き続き、コンサートにいくつか行きました。
Johannes Brahms: Klavierkonzert Nr. 2 B-Dur, op. 83
Sinfonie Nr. 3 F-Dur, op. 90
Drei Ungarische Tänze (2番、17番、4番)
Pianistin: Makiko Nakamura
Leitung: Michelle Maier、René Schuh
Eintrittskarten:13 und 7 Euro im Vorverkauf, 15 und 9 Euro an der Abendkasse
Musikfreunde Heidelbergという市民オーケストラです。もう結成されて25年にもなるとか。ハイデルベルクのStadthalleでの演奏でした。全席自由席でしたが、開場は演奏開始の30分前。皆さんホワイエに集まって待っていました。開場と同時に一斉に紳士的に小走りし、あっという間に席が埋まってしまいました。いい席とるのに結構必死。自由席の時は余裕を持って出かけましょう。そして柱が視界を遮って結構邪魔。
演奏はまあまあといったところですが、ホルンの音色が結構よかったです。ピアノソロは音大生の方でしたが、貫禄たっぷりの演奏。演奏終了後は指揮者の方の50歳(?)を祝うバースデーケーキも登場で、ほのぼのした雰囲気となりました。しかし、音楽の方向性がはっきりしないのはこの指揮者のせいのような。。。何がしたいのかよくわからず、オケにあわせているような感じでした。そんなに無理して暗譜しなくていいから、もうちょっとしっかり音作りしてほしいなあ。オケの技量はまあまあありそうなのに。アンコールは交響曲3番の最後のところでした。
・Collegium Musicum: Werke von Mussorgski und Borodin
S. Rachmaninow: "Ganznächtliche Vigil" op.37 Auszüge
(1番、3番、5番、6番、9番、15番)
M. Mussorgskij/M. Ravel: Bilder einer Ausstellung
A. Borodin: Polowetzer Tänze aus der Oper "Fürst Igor"
Universitätsorchester und Universitätschor
Leitung: Universitätsmusikdirektor Michael Sekulla
Eintritt: 16€/ 8€ (ermäßigt) Kartenvorverkauf: Unishop, Zigarren Grimm
ハイデルベルクの大学オケと合唱団の演奏です。
年に2回の定期演奏会で、場所はAula der Neuen Universitätで、Universitätsplatzのすぐ横です。チケットはUnishopまで出かけて買いました。土日二公演あるうちの日曜日の方に行きました。こちらも自由席で、大勢の人が開場前に集まっていました。入りも上々でほぼ満員ではなかったでしょうか。コンサートホールというよりは講堂といった感じで、合唱団もスペースを取らないといけないので、オケがだいぶ前にせり出してました。ひな壇になってないので1階の後ろはだいぶ見づらそう。
まず最初のラフマニノフの『徹夜祷』で度肝を抜かれる。思えば合唱だけの曲ってほとんど聞いたことがなかったなあ。なので、うまいとか下手とかは比べられないですが、無伴奏の混声合唱の響きにかなり圧倒されました。旋律もラフマニノフっぽく長いですが、だいぶ東洋というか、西洋じゃないようなものが混じっていました。これは結構難しかったんじゃないかなあ。大学合唱団でやっちゃうなんてすごいです。こんな曲があったなんて知りませんでした。合唱団は全部で150人ぐらいぐらいでした。途中、教会の鐘が鳴りやまずに数分待つなんていうアクシデントもありました。各曲の演奏前のチューニングは、指揮者が音叉で音聞いて、リードの声を出し、みんながそれに合わせてました。
続いてオケ登場で、『展覧会の絵』です。熱気がこもった演奏で、とてもよかったです。チューバのソロよかったなあ。ゲルギエフのN響の動画と比べちゃうとちょっとしつこさ(緩急とか強弱とか)が足りないけど、まあ、あっさり熱くという味付けもよかったです。
最後は合唱もオケもみんな勢ぞろいでイーゴリ公より『韃靼(だったん)人の踊り』。お祭り騒ぎみたいな曲を、皆さん楽しそうに演奏してました。ただ、シンバルが、、、シンバルが、、、。打楽器って一発で曲を壊せるんだなという恐ろしさを再認識です。
指揮者のMichael Sekullaさんも、いかにも合唱系の指揮者という感じでしたが、オーケストラとよく気が合っていそうでした。総合的にとてもいいコンサートでした。次回公演はブルックナーのテ・デウムと、ブラームスの交響曲第4番を9月にやるそうです。
Midori, Violine
Ieva Jokubaviciute, Klavier
19.15 Uhr Einführung im Roten Saal: Tanja Hermann
20.00 Uhr Konzert, Fruchthalle
Fruchthallstrasse 10, 67655 Kaiserslautern
Programm:
Wolfgang Amadeus Mozart: Violinsonate Nr. 24
Johannes Brahms: 1. Sonate G-Dur
Franz Schubert: Sonate a-moll
Maurice Ravel: Sonate
Ticket-Preise
Kategorie I 25,00 Euro, ermäßigt 16,50 Euro
Kategorie II 20,00 Euro, ermäßigt 13,50 Euro
Kategorie III 14,00 Euro, ermäßigt 10,00 Euro
Tickets erhältlich in der Tourist-Information Kaiserslautern u.a.
あの、五嶋みどりさんが、なぜかKaiserslauternというちょっと小さめの都市に登場です。1月6日が三王来朝(Heilige Drei Könige)ということで、ハイデルベルクがあるバーデン=ヴュルテンベルク州では祝日なのですが、暇なので祝日じゃない州に出かけようということで、ラインラント=プファルツ州まで出かけたときに、たまたまコンサートの案内を見つけて、情報案内所(Tourist-Information)で25ユーロのチケットを即買いしました。家からだと2時間ぐらいかかりますが、まあ、五嶋みどりさんのためなら。英文表記ではMidoriだそうです。前から4列目の真ん中の席を取りました。
仕事をちょっと早めに切り上げて、Fruchthalleまで出かけます。あんまりおしゃれなホールじゃなかったですが。。。照明なぜか紫色だったし。会場には日本人っぽい方もちらほら。開演前のEinführungにも顔を出してみたのですが、ひたすらドイツ語で楽曲やみどりさんについて講義してました。苦行に耐え切れず途中で抜け出しました。
Kaiserslautern in 4D - IhreStadt-4.de
演奏の方は、そりゃもう圧巻です。小柄の方ですが、ステージの上では大きく感じるほど体も使って表現していました。もうなにか学校の先生に教えられているような感じで、『ここのフレージングはこう』、『このクレッシェンドはここに向かっていくの』を楽器を使って言われているようで、『無駄な音符は一つもないっ!』と言わんばかりでした。全編にわたって意志が込められた音で、それでいてさらりと音楽が流れていて、とても色彩豊かな演奏でした。自己陶酔しているような感じではなく、ひたすら表現者に徹しているように感じました。いやぁ、本当にすごいです。最後のラヴェルは「涼しい顔して超絶技巧」をこなし、会場もよく盛り上がりました。アンコールおしゃれな近代の小品だったと思うんですが、曲名はわかりません。ピアノのIeva Jokubaviciuteさんと一緒に音楽を紡いでいく感じもとても印象良かったです。
研究雑話(1)
・博士課程の学生の論文が受理
学生の論文が受理されたようです。何回かリジェクト食らってたみたいですが、ストーリーを変えて、本人も納得した形になって投稿したら、好意的なコメントが来て、追加実験をいくつか加えたら、それなりにいいジャーナルに驚くほどあっさりと受理されたようです。ストーリーがやっぱり大事ですね。データをいっぱい出したい気持ちや、本当のいきさつをさておいて、読者が読んですんなり納得できる、無理のないストーリーにまとめるのが大事です。結局Reviewerも主張が裏付けられているかどうかを判断するだけで、筋が通っていたらそれ以上の批判は難しいものです。まあ、あんまりこじんまりしてると上のほうの雑誌は狙えないので、ある程度は匙加減の問題もありますが。僕の身の回りでは、今回の学生と同じように、「やっぱこれぐらいだよね」と落ち着くところに落ち着いて受理されることが多い気がします。あれこれまとめて大きい話をでっちあげるのはなかなか難しい。どっかでは勝負しないと、いかんのでしょうが。
受理が決まって、学生さんがケーキを焼いて持ってきてくれました。祝われる人が何か準備するのがドイツ流のようです。いつかは僕も・・・?
・明日?
ふらふらとボスがやってきて、「セミナーの予定入れ忘れちゃったんだけど、あしたできる?」「いやぁ、さすがにきついっす・・・」と答えたらセミナーが一週間お休みになって次週からになりました。明日って、そりゃないっすわー。
・最初は大変
D1の学生が、初めてJoint Lab Meetingでほかのラボの人の前でプログレス報告をすることになりました。二日前に練習ということで、リハーサル。ところがどっこいとてもみんなの前で聞かせられるレベルじゃありませんでした。おいおい、今までどんな指導してたんですか、ボス。結局ポスドクが引き取って、指導して、ようやく様になりました。セミナー終わった後にポスドクのところに駆けつけて「お疲れだったねー。すごくよくなったよ」と声かけたら、「二日間で5、6時間ぐらいかかったよー」と疲れ顔。こういうのはまあ、やりがいはあるけど時間かかるし、どこまで首を突っ込めばいいのかというのはポスドクにとって難しいどころ。やっぱりボスがちゃんと指導するのが筋ではないでしょうかねえ。
・学生実習、再び。
大学院生の3週間の実習コースを、僕も入れて二人のポスドクで面倒見ることになりました。今年はなんかこんなんばっかりだなあ。in situ ハイブリダイゼーションをやるっていうので、僕も今まで体験したことなかったので勉強にいいだろうということで引き受けました。うちのラボが担当する学生は二人。ロシアとトルコから来たそうです。国際的ですね。
形式としては、経験すべき実験のリストが渡され、それを各ラボでアレンジして3週間に収める感じです。特にテーマを定める必要はないらしく、あくまで実習。評価の50%はレポートではなくプロトコルをまとめることになっています。残りの50%は実習中の働きぶりです。
ラボでもあんまりやったことのないin situ ハイブリダイゼーションを、予備実験なしに突っ込んでみたのですが、結局シグナルはあまり得られず、戦いには敗れた感じ。。。一通り手順は抑えたので、実習としてはこれでよいらしいですが。まあ、かといって二人の学生のためにあれこれ条件出しの予備実験というのもポスドクにとって確かに労が多すぎるし、難しいところです。二週目、三週目になってくると、学生も、指導するほうもだんだんだれてきて、お互いモチベーションがあまり上がらない感じでした。もうマスターの学生だからほったらかしてやってみようということだったのですが、ちょっと時期尚早だったかな。「えっーそうするー!?」みたいなミスもいくつかやらかして実験があまり予定通りには進みませんでした。やっぱり誰かつきっきりで見てあげないといけなかったかなあ。でもプロトコル渡してあるんだからしっかり読み込んできてほしかったなあ。最後らへんになると、各操作ごとに確認を求めるようになってきていて、あんまり頭を使いたがらない感じでした。失敗続きで怖気づいたのもあるのでしょうが。
最終日に学生を返すと、指導する方の二人は「疲れたねー」と顔を見渡すほどでした。「この三週間は長かったねー、自分の実験ほとんどできなかったよー。」と異口同音。僕のほうは負担軽減に努めたつもりでしたが、彼女の負担は確かに相当なもの。いろいろイライラしながらも本当によく頑張ってました。ポスドクが大変なのはどこも変わらないようです。
・査読
ボスから査読手伝ってくれる?と聞かれ、ちょうど上記の学生実習中で自分の実験もあまり入れ込めなかったので引き受けました。まあ、あくまで外様のフェローシップポスドクですからねえ。。。役に立てるところは役に立っておかないと。Scientific Reportsからでした。10日以内に返せとか、なかなかせかしてきます。インパクトは求めないので、手法が適切か、主張がデータに裏付けられているかなどを判断してくださいというお達しです。数日かけて読んで、1日かけてレポートをまとめ、ボスに送信。30分程度論文の内容や評価について議論し、あとは任せました。後日ほかの人の査読レポートとともにエディターの決定が伝えられました。ちゃんと二人に回してるのねー。
Scientific Reportsの2015年のインパクトファクターは5を超えており、全科学分野を対象にした雑誌では、Nature, Science, Nature Communications, PNASに次いで5位だそうです。いろいろ批判もあります(下記リンク)。が、基本的にはこういうジャーナルがあったほうが科学にとっても、いいと思います。もちろん、玉石混交は否めませんのでちゃんと気を付けて内容を読み込む必要がありますが、それはほかのジャーナルだって同じです。科学者側にとっては、ジャーナルによる権威づけがなくてもいい成果発表もありだと思います。とにかく早く公表したい場合もあれば、読めばわかるすごい発見ということもあるでしょう。結局論文は中身勝負ですから、本当に重要で本当の発見ならどこに出ていようと読み継がれます。
More on Scientific Reports, And on Faked Papers | In the Pipeline
ただ、個人的には印刷物に対する信仰がまだ残ってまして。。。できれば印刷される媒体に投稿したいと考えています。こうやってだんだんと時代に取り残されていくんでしょうなあ。。。若い子たちがオンラインのWebメールやIMAPやだけでメールしてるのを見ると、POPサーバーでどっかのハードディスクに落としとこうよと思わずにはいられません。オンラインなんていつ消えるかわからないし、校正編集者が頑張るのもやっぱり印刷されるからというのもあるからではないでしょうか。論文という作品をどう仕上げるかという過程で、編集者や査読者も重要な役割を果たすと思いますので、彼らが頑張っているようなところに投稿・発表することで、作品がより磨かれていくと思います。そんなことを思いながら、時間かけてちゃんと査読してみました。もう一人のReviewerさん、ちと読み込みが足りてなかったぞ!
オンラインメディアが跋扈して既存の新聞などのメディアが金銭的に脅かされ、結局ちゃんと取材してしっかり書くところ減っていくのは、あんまり好ましくないと思います。それと同じように、商業目的ではない学術論文業界の各雑誌が編集者、査読者(雑誌の評判と査読のレベルは直結すると思います)などを維持し、なんだかんだと言いながらそれなりの投稿数・インパクトファクターを残していけるかどうか。ぜひ頑張ってほしいところです。
コンサート(1) Konzert
コンサートにいくつか行きました。
・Fazıl Say & Heidelberger Sinfoniker | Veranstaltungen | Heidelberger Frühling 2017
Mo 25. April 2016 19:30 Uhr
Kongresshaus Stadthalle Heidelberg
Programm
Wolfgang Amadeus Mozart:
Sinfonie Nr. 29 A-Dur KV 201 (186a)
Fazıl Say:
Silk Road. Klavierkonzert Nr. 2 op. 4 für Klavier und Streichorchester
Goethe-Lieder für Sopran und Streichorchester mit Schlagzeug op. 44
Wolfgang Amadeus Mozart:
Klavierkonzert Nr. 1 KV 37
2016年春のハイデルベルク音楽祭です。音楽祭といってもそんなに歴史があるものでもなさそうですが。。。ピアノは鬼才・天才・ファジル・サイ!のキャッチコピーで知られている方です。コンサート当日に街中でポスターを見かけて、ネットで購入しました。PDFが届くので、それを印刷するか画面を見せるかで入れるようです。
Antrittskonzert des neuen Professors für Tuba Stefan Heimann
Mannheim Brass Quintett feat. Stefan Heimann, Tuba
だそうですから、チューバ奏者の教授就任祝いコンサートといったところでしょうか。場所はマンハイム城の中のRittersaal(騎士の間?)。演奏は結構素敵だったのですが、間の解説が長かったなあ。。。CDも売ってたので記念に1枚買ってみました。
Alle Veranstaltungen im April 2016 | Veranstaltungskalender
グループランチ その3
・・・
「このドーナツって、Berlinerという名前だけど、ベルリン名物なの?」
「うーん、どうかなあ。あんまり知らないなあ。」
「私がドイツに来て初めてそれをパン屋で買ったとき、すごくおいしかったから友達にいったの。あの『Angebot』っていうパンおいしいねーって!」
「それ特売って意味だよー(笑)」
「そう!友達にバカ受けだったわ。」
「初めてだとわからないよねー。」
「ところで、今日のラボの安全検査(Inspektion)は大変だったね。」
「ボスの顔見た?なんかずっと余裕なさそうじゃなかった?」
「ラボ内は飲食禁止って言ったってねー。小腹ぐらいはすいちゃうし。それに試薬全部保護眼鏡つけて計れってルールが無茶だよ。たかだかアガロースなのに。」
「まあ、一応ほかの試薬が付いてるかもしれないっていうことで。。。」
「結局ルールが厳しすぎると誰も守らないよ。急に全員が白衣着てたから、オートクレーブのおばさんがびっくりしてたじゃない。」
「本音と建前が離れすぎてるよね。ドイツの人赤信号渡らないし。」
「子供が見てるかどうかにもよるかな。いなかったら渡っちゃうかも。」
「うちなんて、赤信号渡った日にゃ、子供から一日中うるさく言われちゃうよ。『お前は悪い奴だー』って」
「そういえば、前に車運転してて赤信号無視して渡っちゃったら、警察に200ユーロ罰金とられちゃったよ。」
「結構高いねー。」
「フランスなら泣けば大丈夫だよ。父親がつかまりそうになった時、私たちが急に泣き始めたことにして、『ほら子供が・・・』って言い訳したらお巡りさん見逃してくれたよ。」
「えっ!さすがにそれはたまたまなんじゃ。。。」
「ううん、何回もこれで行けたよ!だから、ドイツでも捕まったら『あぁ、もう私の人生終わりだ(泣)、これじゃもう生きていけない(泣)』って一芝居打てばいいんだよ。」
「ドイツじゃさすがにそれは利かないような。。。中国なら賄賂でも渡せばなんとかなりそうだけど。」
「韓国に旅行にいったとき、『重大な問題があります』って税関に言われたけど、お金握らしたらすぐに重大な問題がなくなったよ。」
「メキシコの警察も信号無視ぐらいじゃ、あんまり捕まえないかな。ほかにやることいっぱいあるし。賄賂は利きそうだけど。」
「日本はまあまあ捕まえるかな。賄賂はさすがに効かないと思うけど。でも、予算の関係で年度末はよく交通ルールの取り締まりやってるよ。角に隠れて右折禁止とか。普段取り締まらなさそうなやつ。でも誰も見てなかったら赤信号ぐらい渡っちゃうかな。自転車はドイツに比べるとだいぶ自由な感じ。」
「パトカー買うにもお金いるしねー。」
「私もたまに赤信号渡っちゃうときあるけど、自転車だってここじゃ本当は60ユーロの罰金とられるみたいよ。」
「えっ!マジっ!」
「車線を守らないとか、携帯電話しながら自転車に乗ったとかでも20ユーロとか取られるから気を付けてね。」
「車の運転中の電話が見つかって、この前40ユーロ罰金取られちゃった。。。」
「結構やんちゃな運転してますねぇ。見えないですけど。」
「携帯といえばフランスの親戚のお父さんが運転中に電話で良く話してて、警察が見えたら、捕まらないようにすぐに携帯電話を投げ飛ばしてたの。話してる相手にも事情がわかるように『ポリース!』って叫びながら。そしたら子供たちがそれをまねし始めて、電話のおもちゃを『ポリース!』って叫びながら投げて遊ぶようになっちゃって、ほかの親せきから『お前のところの親はいったい何をやってるんだ!』って言われてたわ。」
「すげえ教育(笑)、さすがフランス」
・・・
学生実習
前の会話の続き。
「あとさ、学生実習やらなきゃいけないんだけど、担当してくれる?」
「僕がですか?」
「クローニングと、イメージングで3週間。学生は一人。こうして、ああすればちょうどいいんじゃないか?」
「こうはいいですけど、その「ああ」はまだやったことないんですが。。。」
「ああ、そんなに難しくないよ、ラボメンバーに聞いてくれればみんな教えてくれるよ。」
「はぁ。。。まあ、そういうことでしたら頑張ります。頑張ってみます。」
「3週間に収まるようにちょっとプラン考えてみて。」
「はい。。。ではまた来週ご相談ということで。。。」
ということで、もう一つ野暮用です。同年代の研究者でも論文どんどん出してる人いるのになぁ…こんなことやってる場合じゃない気もするけど…。まぁ、何事も経験ということで。
修士課程1年生用のコースで、受講者は4人。実習のテーマは「クローニングとイメージング」で、4つのラボが1人ずつ受け持つようです。一緒にやりゃいいのになあ、、、不思議。期間は3週間。なのである程度自由度はありそうです。せっかくなので、クローニングした蛍光たんぱく質付コンストラクトを発現させて顕微鏡で観察するということにしました。
始まる前に学生を一度呼び出して打ち合わせ。内容はほとんど学部生の時にやったことあるとのこと、、、おいおい。なんでこれを選んだんだ?実習中の3週間はずっと朝の一限目が講義のようで、10時ころから毎日ラボに来れるのだそうです。クローニングに使うプライマーの設計をやらせてみるもののいろいろ怪しい様子。音を上げずにずっと考え込んでるのはえらいっちゃえらいけど。。。少し手ほどきしてぽちっと注文。
その後実習が始まり、無事PCRもうまくいき、実習はスムーズに進みました。評価はレポートとプレゼンの様で、終了から2週間後に学生4人と、指導したポスドク4人と、責任者の教授が出てきて発表会を行いました。教授の方からのちにメールが回ってきて、評価もよろしくーと丸投げ(?)。五段階評価をつけて返信して終了です。
感じたこととしては、、、
1.発表がうまい。
日本のM1の平均よりはだいぶ発表が上手な気がします。英語でドギマギしているような人はいなかったし、皆ちゃんとアイコンタクト取りながら身振り手振り交えながら発表になってました。原稿棒読みとか、何しゃべってるか聞こえないとか、スライドを見ても何が言いたいのかわからないとか、そういうのはなかったです。レポートも自分の学生の分しか見せてもらってませんが、実習中のしどろもどろな感じとは打って変わってそれなりにしっかりしたものが出てきました。科学的なところはまあ、そんなこといっちゃっていいのかよみたいな所はいろいろありますが、そういうのはこれから学んでいくのでしょう。論文を書くとか、発表するとかの基本的なところは彼らにとって朝飯前みたいなんだなあと思うと、うらやましい限りですなあ。
2.学生が自由。
ほかの人を見てもあまり子弟制度みたく、付きっきりで面倒を見ている人はいなかったので、郷に入っては郷に従えで適当に泳がせました。あるものは勝手に使うし、わからなかったらあたりの人に適当に聞くしと、よく言えば自立してる感じです。勝手しすぎてこっちが肝を冷やすことが何回かありましたが(他人のバッファー、道具を勝手に使うとか、勝手にどっかに物を置くとか)。
3.実験が下手
自由な反面、細かいところは誰も教えていないようなので、実験のいろんなところがむちゃくちゃです。ピペットマンはこう持つとこういうとき便利だよとか、この量は大事だけど、こっちは比較的適当でいいよとか、そういうノウハウが、学生さんにちゃんと伝えられていないです。学生の方もドイツ人の気質なのか、「理屈上うまくいく」となれば後は実行するのみの様で、ほかの人を盗み見てどうしたらもっと効率よくできるのかをあまり学ぼうとはしてないようです。ピペットマンがプルプルしてるんだから、座ってやるとか、もう片方の手を添えるとかいろいろあるだろうに、、、混ぜた後に毎回遠心機でまわしてスピンダウンしなくてもいいだろうに、、、お昼ご飯食べる前にそれやらないと帰るの遅くなるのに、、ええ、結局明日に延期しちゃうの?まぁいいけどさあ。。。
4.実習がいっぱいある。
こんな感じの実習生がよくラボに出入りしてるので、ラボも扱いがよくわかってる感じです。どうせならラボの研究にも役立つかもしれないような、まだ結果がわからないようなところに踏み込もうとボスに相談したのですが、「ただの実習なんだからそんなに欲張らなくていいよ」とたしなめられました。ただただ無事に一通り実習を終らせてくれればいいという感じです。学生の方もそんな感じで、あまり何かワクワクするようなものを求めているのでもないよう。。。ほかのラボの発表も聞きましたが、ラボの研究を手伝わせただけのようなところもありました。ラボローテンションなどもありますし、サクッと小さいテーマを立てて、ちょっと実験して次に進むみたいなトレーニングをよく積んでいるなという感想です。
日本とは違って、博士課程の研究は枠が限られているようで、学生側もこういった実習での体験を履歴書(CV)に書いて、選抜を勝ち抜かないとありつけないようです。なので卒業するために単位が必要なだけ、というよりは今後の自己アピールのためにも実習が必要な感じです。
今回は学生一人しか見てないので、どこまで一般化できるかは怪しいところですが、必要最小限の努力以上はあまりしたくない様子。こんなこともできるよ、あんなこともできるよと紹介しても、「別にいいです。」「やったことあるので大丈夫です」「ほかにもいろいろ忙しいんで。」とほとんど断られました。まあ、そっちがその気なら、こっちから取り立てて詰め込むこともないですが。。。菌が増えるのを待っているだけの日とかはそそくさと帰っていきました。まだやってない実験もあったし、レポートをラボで書くとかしてたらいろいろ相談に乗れなくもないのに。。。時間があればほかのラボメンバーの研究も聞いてみてとも言ってるのですが、結局誰の研究にも興味を持つことはなかったようです。うーーん。まあ、満足してくれたようなので、よしとはしますが。。。
短い総説
ボスからのお呼び出し。
「短い総説を書いてくれって言われてるんだけど、草稿書いてくれないかなあ。」
「えっ、僕でいいんです?分野転向したばかりなんで、あんまり詳しくないんですが、、、」
「本当は学生に任せることになってたんだけど、あいつはいま就活で頭いっぱいだろうからさ。それにこの業界なんだかんだ言って筆頭著者は大事じゃない。就職しちゃうとあんまり関係ないだろうけど。まあ、ちょうど勉強にいいになると思うよ。」
「はぁ。。。まあ、そういうことでしたら有難く頑張ります。」
「ちょっと最近総説ばっかりでネタがないんだよね、、、なんか考えてみて。締め切り一か月後だからよろしく。」
「来月!?」
「2,3週間は延長してもらえるだろうから。心配しなくて大丈夫だよ。」
「まあ、だいたいそういうもんですけど。。。とりあえず急いで書いてみます。」
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一通り文献を読んで、まとめて持って行ったところ、パンチが弱いねえとのことでした。今やっている分野は、わかっているようで、肝心なところはほとんどわかっていないような状況なので、そのあたりを整理してみたのですが、、、まぁ確かに分野外の人にとっては読みごたえがない感じ。
「パンチ」を求めて、ほかのラボに行き、そことコラボして書くことになりました。議論はなかなか有意義でしたが、みなさんアクが強い。一つの原稿に落とし込む過程はいろいろ苦労しました。初めての共同作業。
1.締め切りを作っても守る気がない。催促しないと何も出てこない。一夜漬けでなんとかしようとする。じゃあ、書いてみるわーと言って一週間待って二段落しか出てこなかったときは、マジでどうしようかと思いましたが。。。まぁ、そういう人たちだとわかってとりかかればなんとかなります。
2.原著論文をまともに読んでない。定義があいまいでふにゃふにゃした用語を平気でぶち込んでくる。それを断定するほどのデータは論文にないでしょと突っ込むと、うちのラボの未発表データがあると返ってくる。それじゃ総説にならんではないか。英語は僕よりだいぶ上手なんだけどねえ。
3.図はコピペで何とかしようとする。承諾を得ればいいっちゃいいけど、自分の名前が入った論文なんだからもうちょっとこだわりをもってだねえ…。大体本文読まずになんで勝手に図作っちゃうわけ!?
まあまあイライラしながら、二回ほどミーティングを重ね、なんとか投稿。こういうのって、招待でもちゃんと査読が付くんですね。査読付き総説は初体験です。投稿作業とか、カバーレターとかは全部ボスが担当。日本だと全部自分でやったんだけどなあ。手間が省けていいですが。
一か月後に2人の査読コメントが返ってくる。うちのラボの担当したところに関しては問題なかったけど、コラボ先のところに関してはいくつか辛辣なコメントが。ミーティングを開くと、査読者が悪いのオンパレード。。。手間暇かけて読んでくれたんだからもうちょっと意見尊重しようよ。。。そんなむちゃくちゃなこと言ってないと思うんだけどなあ。
修正方針について合意してしばらく待ったものの、本文で特に直すところはないという無茶なことを言い出したので、結局こっちがコラボ先の文章を直すという奇妙な展開に。それを見てコラボ先がここは表現が弱い、受け入れられないとまたゴネる。だってデータないじゃんとちょっとキレ気味に言ったら、未発表データがある!とこの期に及んでのまた悪あがき。査読と戦う前にまずは身内と戦う消耗戦。疲れる。。。とはいえ、コラボ先の担当分野なのでこちらがこれ以上口をはさむわけにもいかず、ちょっと修正して再投稿。しばらくして受理通知。エディタ判断で、査読にはもう回さなかったのでしょうか?
アメリカほどじゃないですが、みんな押しが強くて、思わずこっちも強く言い返す場面がちらほら。日本とはちょっと議論の文化が違うという感じです。人によって締め切り守ったり守らなかったりはどこでもいっしょな感じですかね。日本だと、どうしてもネイティブスピーカーじゃない分、科学が輸入文化な分、コメントに対する応答は弱気になってしまいますが、「たかが一人のレビュワーのために、主張は替えられないわ。だってわかりにくくなるもの。」と平然と言ってのけるその逞しさ、すごいです。うちのボスはもう少し弱気な感じですが。。。何はともあれいい経験にはなりました。次はちゃんとした論文書かないとなあ、いつになるやらですが。