Wunderbarな日々

妻子連れ30代生物系ポスドクのドイツ滞在記です。

研究雑話(2)

・プログレスレポート

3か月で2回ペースで進捗状況を報告しております。さすがにちょっと多すぎやしませんかねえ。いくら身内の発表とはいえ、発表するとなれば、ある程度体裁も気になるし、結論付けるのに足りないデータもとりたくなるし、といろいろ準備に時間がとられますが、心の中では「まぁ、こうだろうな」というのもあるわけで。発表の頻度が少ない方がもっと面白そうなことに絞って深く掘れると思うのですが。まぁ、一長一短だし、素直に従います。

ある回の終了後、「日本人は上下関係を大事にするのかもしれないけど、ここではやりたくないことはやりたくないと言っていいんだよ!」と学生たちがアドバイスをくれました。セミナー中にボスが提案した実験に対し、「確かに面白そうですが、今のところ、プロジェクトと直接かかわるようなことではないので、準備を始めるぐらいならまだいいかもしれませんが、、、」とお茶を濁していました。「遠慮不要で断らないと、つまらないことに時間を取られるぞ!私なんて無駄だと思った実験に半年もとられて、結局無駄だってわかったんだから!」と学生からの忠告。おっしゃる通り。でもわかっちゃいるけど、このあたりのさじ加減がなかなか難しいんだなあ。そもそも意識の問題もありますが、表現の問題としても、日本だと10思ったら、5ぐらいに弱めてもちゃんと伝わるけど、ドイツだと、みんな10思ったら20ぐらいの言葉にしてるように感じます。簡単にNo!っていうし、結構簡単に翻意するし。まあ、これも含めて英語学習ということですな。

またとある回では、これは面白い実験だと思って提案してみたものの、総スカンを食らいました。そうはいったってもう準備しちゃったんだし、なにくそーと思いながらデータを取って、次の回で発表すると、ようやく面白いと食いついてくれました。「そういえば、これ、やらなくていいよって前のセミナーで言ってたね。いやー、やっぱりちょっと見てみる(take a look)というのも大事だね」とボスも一言。うーん、でも本当はちゃんと前回のセミナーで反論して論破できるぐらいにならんとなあ。まだまだ議論力不足。

 

・凡ミス

情けなくなるぐらいの凡ミス発見。。。やりなおすのに半年コース。せっかく面白くなってきたのに。。。文句言っても仕方がないので、せっせとやり直します。早く気づけて良かったと言えなくもないが、、、あ゛ぁー、しかしショック。

 

・口が悪い

西洋人、皆さん結構口が悪い。というか、表と裏で結構違うことを言う。「Super!」とか「Cool!」とかと口先ではよく人を褒めるのだが、じっくり本音を聞いてみると、そうでもないことがままある。

先日はサーバーに問題があり、仕事がしばらくできなかったので、フランス人ポスドクがIT部門の人を呼ぶことになったのだが、このIT部門の人のレスポンスが悪い。数日待たされてようやくやってきてくれたのだが、「あいつ、まじでクソだよ~」みたいな会話を5分前にしてたのに、打って変わってにこやかに応対。かと思えば、去った5分後にはまた悪口再開。

ほかの日は、ボス主催のセミナーで、セミナー後にゲストをディナーにご招待。ゲストが来るまでラボメンバー3人で待っていると、ボスから今日のゲストの研究についてかなり辛辣なコメント。ゲストが登場すると仕事が面白いよねとほめて、ゲストが帰るとまた批判的に。。。もちろん日本だって、表立って悪口いうような奴はいないが、あんまりそういう表裏があるところを人に見られたくはないから、裏でこっそり見たいな感じなんだけど、みなさん堂々としていらっしゃる。これが当たり前なのかな?西洋流のおもてなし。こりゃ、僕も裏で何言われてるか、推して知るべしだなあ。

 

・所内のセミナー発表

研究所の合同セミナー。学生・ポスドク3人が週に1回、20分ずつ発表するというもの。いろいろな分野な発表が聞けて面白いと言っちゃ面白いのだが、最近は自分の分野以外聞きにいかないやつが増えてきたと、何やら教授・グループリーダー会で問題になったらしい。どこも似たようなものか。うちの研究室はこの日の朝にセミナーをやっているので、午後のこのセミナーも聞きに行くと一日がつぶれちゃうよとラボメンバーから苦情が出て、ついにラボセミナーの曜日を変えることになった。こういうセミナーがあることが、同じ研究所にいる意義としてとても重要というボスからの意思表示。

これとは別に、近い分野のグループが集まり、月に一度の学生・ポスドク合同セミナーというのもある。加入約一年でついに発表の順番が回ってきてしまった。データがまだ全然ないので、何をしたいかを中心に話をまとめ、ちょっと出てきたデータを各所にちりばめる。ラボでは皆リハーサルをやるので、一週間前にスライドまとめて、メンバーから意見を募る。20分の発表でも学生がやると2時間ぐらいかかって結構炎上するのだが、幸い40分ぐらいでサクッと終了。ふぅ。ポスドクのメンツはとりあえず保たれた。納得できる指摘が多かったので、大体はそのまま取り入れる。

「解くべき具体的な問題が多すぎる。大問題1つに小問題3ぐらいまで!」

「時間にまだ余裕はあるし、概念だけじゃなくて、もうちょっとラボの過去のデータも織り交ぜた方がいい。現実味が増す。」

「表記の仕方が分野のスタンダードとずれている。」

などなど。

「ココのスライドはよかったよ。」とほめてくれるのも西洋風。日本ではほとんど言われたことなかったな。。。リハーサルにボスは欠席。でも、特に見せに来いとも言われてなかったから、大丈夫、、、か?自分から聞きに行くべきだった、、、か?まぁ、いいっか。

発表当日。ボスは講義があるから来れないはずだったが、学生が講義に一人も来なかった(!!)ので、講義は中止でお越しになる。ええっ!聞いてなかったよ!

発表を無事に終え、質問も2、3出る。基礎のところでまだまだしっかり勉強した自信がないので、質問者の発言が間違っててもなかなか訂正する勇気がない。。。あとでボスがフォローしてくれてた。終了後、初見のボスに何を言われるかひやひやだったけど、特に大きなダメ出しもなくて一安心。

「あそこのデータ、もうちょっと説明してもよかったんじゃないか?」

「そこの説明は、リハーサルでみんなから説明いらないと指摘されたところでして。。。」

「えーーっ!!」

まぁ、十人十色で意見は異なるものです。次回はぜひリハーサルにお越しくださいませ。って、日本だと逆にこっちから見てくださいとお願いするよね。。。感覚狂うなあ。そもそもボスのいない時間帯にリハーサルとかやらなかったなあ。こっちではままある。

 

・いざこざ

僕のあずかり知らぬところでラボ内紛争ぼっ発。3日間の技術的なセミナーが行われるとの案内があり、無料だし、近所だし、ちょうど習いたいことだし、早い者勝ちだしとラボメンバーがごっそり応募。ラボ内はSlackというLINEみたいなプラットフォームで会話しており、誰が行くー?みたいな話をみんなが気軽にしていた。

ところが、ボスが急に異を唱え始める。この技術セミナー、ラボセミナーにかぶってるし、研究所の公式なシンポジウムにもかぶってるじゃないか。そもそも先週も二日間かけて君たち同じ演者を招いて自主的なセミナーをしたばかりじゃないか。本当にこれ必要なの?時間は効率的に使わないといけないよみたいなコメントがSlackで流れ始める。何回かコメントのやり取りがあって、これじゃらちが明かないということで、ミーティングルームにメンバー全員が集められてミーティング。

参加する方の言い分としては、この技術は大事だし、でも習得するのが難しいからセミナーに出たい。全日程はかぶってるけど、このセミナーは行く日ごとに応募するからそもそも私たちかぶってない日にしか行かない。自主的なセミナーの時に演者に聞いたところ、このセミナーをお薦めされた。ボスからこういうことを言われると委縮してしまうとのこと。

ボス側の言い分としては、かぶらない日程にだけ行くとは知らなかった。委縮させてしまうような書き方をしたのは悪かった。でも、ボスとしてそれが必要かみたいな問いを発するべきだと思うし、これからも発していきたい。だからそんなにショックを受けないでほしい。実験や解析の細かいところまではもう知らないけれど、問われたときには委縮せずにどう重要なのかをあなたたちが説明して、納得させてほしい。時間を投資するだけの価値があるかどうかを常に考えてほしいとのこと。

この後も延々と議論は多岐にわたり、2時間ほど続きました。。。「この前、ボスはこの解析もうやめるべきだっていったよね!」「そんなこといってない。誤解だ。いつ終わるかを聞いただけだ。」「でもあんまり興味なさそうにしてたじゃない!」・・・などと昔の話絡んで出てきたりと。。。ふぅ。疲れた。まあ、積もり積もった話でもないと、いきなりこれぐらいのことでいざこざになったりしないわな。ちょっとラボ内のコミュニケーションが最近少なかったのかもしれないなあ。

つまるところ、ボス部屋だけが離れているのもあり、別にハブにしているわけではないけど、ボス抜きで研究生活がどんどん進んじゃっていて、そこに俺をもっと関われらせてくれというのがボスの思うところ。忙しそうに見えていても、ドアをノックしてほしいとのコメント。ラボメンバー的には、普段スルーしてるのに、急に「なんでセミナー行くの?」みたいに聞かれると、それはプレッシャーになるよー。でもまあ、こういうセミナー参加や、実験のこと、プロジェクトのことも、もっとボスと積極的にかかわりあって決めていきましょうということで落ち着きました。

終った後は中国人ポスドクと、メキシコ人ポスドクと個別に軽くおしゃべり。こういうことが起きたときにみんなで話し合うってすごいよね、、、お互いの前のラボならボスがダメと言ったらもうダメだよね、と意見一致。今のラボの雰囲気はいい方だと思うので、これを維持できるよう、それぞれがもう少しずつ努力をしないといけないなあ。あとは、やっぱり言語の問題。お互い英語で意思疎通してるけど、誰にとっても第二言語なので、細かい感情の機微を表現したり感じ取ったりするのは難しい。重い言葉を受け止められなかったり、軽い言葉を受け止めすぎたり。表面上の意思疎通はできても、ある程度時間が経たないと、お互いが何を考えているかはやっぱりわからないなあ。ってこれ、一番最初にも書いてるじゃないかっ!