Wunderbarな日々

妻子連れ30代生物系ポスドクのドイツ滞在記です。

研究雑話(5)

・フンボルト奨学金の延長

 Humboldt財団のResearch Fellowship for Postdoctoral Researchersは最大24か月間ですが、12歳以下の子供が帯同してドイツに滞在している場合は、さらに最大12か月間の延長ができます。通常のドイツの被雇用者は、Elternzeitと呼ばれる育児休業を取ることが可能で、その代わりといった感じでしょうか。

http://www.newsdigest.de/newsde/news/featured/4759-944.html

申請は、元来申請していたフェローシップの終了期間の6か月前から3か月前までの間にすることができます。

Support during Research Stay

ログイン後、上記のフンボルト財団のサポートのページから、Fellowships for researchers coming to Germanyを選び、Humboldt Research Fellowshipsを選び、Benefits for familiesを選び、Application form を選び、今だと4ページ目に「8.2 Parenthood: Extension of the fellowship in the context of parenting support」という項目がありますので、ここを埋めて申請します。

ボスの承認も得る必要があり、申請書ページに"The academic host's confirmation of research facilities"というファイルへのリンクが張ってありますので、記入してボスのサインをもらって、フンボルト財団まで郵送します。

数日後、フンボルト財団よりメールで申請を受領したとの連絡があり、子供と妻がいつドイツに到着したか、フェローシップの24か月間で、妻子が僕と帯同していなかった期間があったか?あったならいつか?という問い合わせでした。返答すると、次の日には12か月の延長が許可されましたという書類がメールで届きました。速い!

この書類で健康保険を延長して、滞在許可証の延長を行いますが、まあこれも、滞在許可証の期限が切れる一か月前ぐらいからですかね。早すぎると、外国人局に追い返されます。ふぅ、これでなんとかもう一年給料を確保です。そろそろ研究成果をまとめにかからないとですね。奨学金延長のお知らせは、研究室の秘書さんにも提出しました。なんでも、毎月800ユーロずつ振り込まれていた研究費を、当初の24か月間を超えても使えるようになるそうです。へぇ~。

 

 

・シーケンス

PCRでクローニングした後に、DNA配列を確認します。日本では自前で結構作業していたのですが(PCR反応、エタ沈、シーケンサーにセットなどなど)、今いるドイツの所属先では外注でアウトソーシングです。同じ研究科内の数ラボがまとまって団体交渉して、Eurofinsという会社から格安な条件を引き出しており、通常はそれを利用してました。DNAサンプルとプライマーを混ぜて送ってもいいですし、サンプルとプライマーを分けて送って、同一サンプルに対して複数プライマーというのにも対応しています。うまく配列が読めなかったときには、再解析も無料でやってくれて、お値段1run 3ユーロだそうですから、これは安い。自前でシーケンサーもっていても、試薬代・維持コストだけでもこの値段にはなかなかたどり着きません。労働力・時間給も考えればなおさらです。

QRバーコードが付いたシールラベルを、1枚3ユーロでたくさん前払いで購入してあり、通常はサンプルを入れたチューブにシールを貼って、夕方までに専用ボックスに入れておけば、深夜早朝には解析センターに到着し、次の日の午前中には結果が届いてました。ところが最近、数日の遅延が目立つようになり、Eurofinsの解析センターがドイツのケルンに移ったのにもかかわらず、サンプルが前使っていたスペインのマドリッドのところに送られたり、競合他社のMacrogenのオランダ・アムステルダムに送られたりと惨憺たる現状に。サンプルがマドリッド行きになったときは、結果が出るまで三週間以上待たされたりすることもあって、もうクローニングところじゃありません。

こりゃ仕事にならんと、技官さんと相談。学内にそういう施設ないのかと聞いてみましたが、聞き覚えはないとのこと…。日本だと効率化が遅い分、探せば学内のどっかでシーケンサーがまだ動いてると思うんですが、ハイデルベルク大学ではどこも外注で、もう撤退済みとのこと。共通利用できるのは Deep Sequencingばかり。。。ボスに聞いてみても、しばらくの間ならほかの会社に頼んだらいいんじゃない?昔はSigmaがやってたよ、とのたまうのですが、Sigmaヨーロッパはすでにシーケンス解析から撤退済み。まあ、あんまり儲けがないのでしょう。

日本だと、こういう時は代理店の営業担当に話せば、すぐに手配してくれるのですが、ドイツではそういう代理店もないので、仕方がないと自分で探すことに。というか、うちの人たちはシーケンスの結果が来なくても、来ないんだからしょうがないとクレームをつけながらじっと待っているだけ。。。カッカしているのは僕だけの様です。

さて、しばらく探して見つかったのが、

HOME: GATC Biotech (Eurofins傘下になったらしい)

Macrogen Online Sequencing Order System (韓国系)

LGC Genomics (中国系)

です。どこの会社もサンプルを送れば解析してくれるのですが、送料が無料になる回収ボックスをハイデルベルク大学内で設置しているかどうかは、コンタクトを取らないと教えてくれません。上記三社はいずれもハイデルベルク大学内に無料回収ボックスを設置していました。営業のレスポンスが一番よかったMacrogenにお願いしました。新規参入したいらしく、年内は1 run 2.5ユーロでやってくれるとのこと(プライマー・DNAミックス済みのサンプルのみ。再解析オプションは事前購入で+1ユーロ)。ラベルが届く前に手元にあるサンプルもとりあえず送ってくれたらすぐに解析するよと親切な感じです。

Macrogenは夕方送って、翌日朝に到着し、そこから12-24時間で結果が出るので、Eurofinsよりはちょっと遅いのですが、それでもいつ結果が届くのかわからないよりはましです。ほかのラボの同僚はGATCを使っていて、それも同じようなタイムコースの様です。解析結果にも満足し、これで一件落着かなと思っていたところ、ある金曜日に送ったサンプルが月曜日になっても届かない。。。ちなみに遅延がないときのEurofinsは金曜日にサンプルを送れば、土曜日中には結果を返してくれていたのですが、Macrogenでは月曜日に解析の様です。

営業担当に連絡をとるとすぐに返事があり、どうやら配送業者のUPSが間違えてボスニア(!)にサンプルを送ちゃったらしい。戻すよう手配したが、1、2日かかるので、申し訳ないが待ってほしいとのこと。誤配送による遅延の元凶は運送会社のUPSだったようで、EurofinsもMacrogenも同じ会社を使っていました。同僚によると、昔はFedExがやってて、そのころは何の問題もなかったそうですが、UPSに代わってから、誤配送がしょっちゅう起こるようになったそうです。実際、ハイデルベルグからボスニアに飛んでったサンプルは次の日にはアムステルダムに着き、無事解析されました。ワールドワイドですね。

Macrogenからラベルが届いた時に封筒に請求書も入っていました。日本だと債権者登録だの、検収だのがいろいろありましたが、そういうのもなく、請求書一枚秘書さんに渡すと、数日後に大学から直接振り込んでくれました。こういったラベルがあるとサンプルの取り違いもなくて便利なのですが、先払いになるので「ちゃんと解析に使ったのか?」と言われたり、年度をまたいだ時に「昨年度のお金で今年度の研究に使うなどけしからん」などといろいろいちゃもんがつけられるからか、日本ではありません。実際に年度をまたいだ預け金みたいな不正利用な事例でもあったのでしょうか。また、受託解析を頼んだ時も、その都度、検収をうけないといけなさそうな気がします。解析業者の方も、その都度、納品書、請求書、見積書を出すことになり、その手間とコストのために代理店を挟むことになって結局値段が高くなります。研究機関側も扱う書類の量が増え、人を多く雇うか、遅くまで働かせるかになってしまいます。

国民性の違いなのでしょうが、不正利用があり得ないように、コストが高くなっても一つずつ、きちんと検査したくなるのが日本人で、見つかった時に厳しい罰則を与えるルールで予防すれば十分で、そんな面倒な検査はしたくないというのがドイツ人といった感じですかね。ほかにも例えば、電車乗るときにお金かけて改札機を作り、区切って入れないようにするのが日本で、抜き打ちで検査して罰金を払わせれば十分と考えるのがドイツです。実際、研究費使用に関して文科省がそこまで厳しいルールを設けてないのに、大学側で面倒ごとを避けるかのようなローカルルールを勝手に忖度して作ったような例もたくさんありましたので、これはもはや日本人の性というものでしょう。

まだまだ研究者の皆様へ | 衆議院議員 河野太郎公式サイト

一方、ルールを守るかどうかにも違いがあり、ドイツ人の方がダメなものはダメだという感じで、日本人の方が、「みんなやってるから」とか「ばれなきゃいいんだ」とかで悪さをしちゃう気がします。車が全く来そうになくても赤信号を守って横断歩道を守ってる人の割合はドイツの方が圧倒的に多いですかね。融通もその分利きませんが。まあ、その土地と国民性にあうようにルールは作られていきますね。

 

・出産祝い

ドイツ人学生が産休に入り、わずか2日後に出産。すごいタイミング。。。出産祝いをみんなで買うことになったのですが、まず関連がある数ラボに案内メールを回し、「お金を入れる箱を置いとくから、カードに名前書いてお金入れてね!」と連絡。すると皆さんあちこちから続々と集まってお金を入れて、全部で200ユーロ弱になったでしょうか。その後何かいいかを検討して、予算額に合わせていろいろ購入するといった感じでした。昨年のクリスマスから、子供向けのプレゼントばっかりもらっててうんざりしているということで、母親本人に喜んでもらえるプレゼントを買おうということになり、結局何になったのかはっきり覚えてないですが、確かカフェで朝食をとる券とか、好きな美術館に入れるチケットとか、観賞植物とかになった気がします。日本だと、買うものを先に決めてからみんなで割り勘というのが多かったと思いますので、ちょっと斬新、でも合理的。

西洋人はみなさんファーストネームを覚えるのがとても早いのですが、時たま会話にフェリックスとかファビアンとか知らない名前が出てきます。なんだと聞けば、やれ彼氏の名前とか、息子の名前とかとか。そこまで覚えないといけないのか。。。あぁ大変。新しく誕生した子供の名前もちゃんと覚えとこ。