Wunderbarな日々

妻子連れ30代生物系ポスドクのドイツ滞在記です。

研究雑話(6)

 ・新ポスドク

去ったフランス人ポスドクの代わりに、共同研究していた韓国のグループからポスドクが一人加わりました。なかなかの業績を引っ提げての登場。研究環境の違いにいろいろ戸惑ったりもしてましたが、さっそくラボで長年うまくいかなかった問題を解決するなど、違いを見せてくれました。これが違いを作り出すということですか。さすがです。果たして自分は違いを作り出せたのか・・・自信がないところです。

韓国もやはりアジアよりの研究環境の様で、ドイツに来てからはボスとの距離感が少し難しかったみたいです。ボスが言ったら絶対みたいな空気があるときは、上の人も下の人もそのようにふるまうものですが、ヨーロッパではそういう空気が少ないだけに、上の人も適当なことをペラペラしゃべってるし、下の人も上から言われたからって従順にというわけではありません。「データの相談をしたいんだけど、いついけばいいかな?」「いやまぁ、教授室のドアが開いてるんだからいつでも行っていいよ。」といったやりとりのあたりは新鮮な感覚でした。

 

・新学生

博士課程の学生も一人加わりました。奨学金を引っ提げて中国から留学してきたものの、ボスと馬が合わずうちで引き取る形に。頑張り屋さんだけど、サイエンス的にはまだこれからという感じでしたが、新ポスドクが面倒を見ることに。まあ、馬が合うかどうかはばくち打ちみたいなところがありますから、早めにやりなおせたことはみんなにとって良かったんではないでしょうか。

新しく来た二人は週7日いくらでも働きます状態。ラボでは20個体ぐらいでやっていた遺伝子型のチェックを、150個体ぐらいでやるもんだから、いくらなんでもそれはもうちょっと労力減らしてもいいんじゃないかとも思いますが、、、よそから口出してもなんだし、研究が進むなら温かく見守るというか、負けないようにこっちも働かなきゃというか。ラボの空気はやっぱり人でガラッと変わるものです。

 

・書類、書類、、

フンボルト財団から奨学金を延長も含めて3年間頂いてますが、最終年に入りましたので、そろそろそのあとも気になり始めるところ。 プロジェクトもまだ半ばということで、できればドイツでもう少し続けたい。自主財源が自由な研究にはなにより必要ですが、ドクター取ってから4年目、すでに海外に来ているとあっては応募できるフェローシップもなかなかなく、JSPS(日本学術振興会)に頼るしかないようです。

第一候補は海外学振。今年度から支給額が年額520万円から620万円になったそうですが、応募者増えるんじゃないかとか、採択率落ちるんじゃないかとか、申請する方は結構複雑な気分。とりあえず応募者激増ということはなかったみたいですが、内定辞退は減るんじゃないでしょうか?そんな奴いるのかって?ゴホッゴホッ。。。

申請・採用状況 | 海外特別研究員|日本学術振興会

2月に募集要領発表、3月中旬に受付開始で、5月上旬の締め切り。元ボスにも申請書類の草稿を見せてコメントしてもらいましたが、日本語が下手になったなというのと、募集要領を隅から隅まで読めとのお達し。審査セットを改めて見てみると、生物系の区分は3年前とは変わり、「分子レベルから細胞レベル」、「細胞レベルから個体レベル」、「神経科学」、「個体レベルから集団レベル」に分かれていました。審査員のバックグラウンドを理解してないと、書く書類が変わるのも当然です。。。まだまだですな。審査セットだけ公表が遅かったので、チェックし忘れていました。現ボスにも見せましたが、何しろ日本語だし、まぁ、推薦書は書くから頑張ってといった感じでした。英語でもよかったんですが、、、落ちたときに悔しくなりそうだから、やっぱりまだ日本語ですかね。

海外学振が本命ではありますが、最近は学振PDと併願している人もちらほら聞きますし、併願可能と募集要領にもあります。3年間の学振PD期間中も海外で研究することが推奨されていて、今年度から最大で2年間までになりましたので、実質、サポートされる期間は同じです。給与額は年額430万円と少な目ですが、年額150万円以内の研究費がついていて、海外滞在中はそこから日当が出せるそうで、海外学振と変わらないレベルの収入を得ることはできます。税金とか社会保障とかどうなるかわかりませんが、、、。年間18名というSPDに当たれば、給与530万円+300万円の研究費が・・・まあ、SPDほどの申請書じゃないです、はい。

PDの方は日本のラボに所属することになりますので、まずは所属先探し。申請書類の草稿を送って、Skypeでミーティングして、出してよいよということになりました。海外学振は個人申請ですが、学振PDはそのラボが所属する研究機関から申請することになりますので、申請者用のIDやパスワードを事務に発行してもらい、学内の締め切りなどを教えてもらいます。4月上旬に学振が受付開始ですが、4月中旬が学内締め切りで、そのあとに事務チェック。とんとん拍子で話が進んだからよかったですが、もうちょっと早く、3月上旬ぐらいから準備を始めた方がよかった気がします。学内締め切りの後も、結局提出するのは6月1日。教授たちがだんだん締め切り気にしなくなるのもわかります。その間になんかいいデータとか出れば、盛り込みたくなりますわな。

評価書も出そろい、いざ申請・・・になるといろいろ誤植が見つかるもので、あーだこーだ半日ぐらいかかりました。PDの方が研究期間が1年長い分、いろいろ書く欄が多いので、併願は思った以上に準備に手間取りました。どちらかが当たるとよいですが、両方外れたら、そろそろ今の研究やめた方がいいよと受け取って、別の道を探しますかね。6月11日に今年のPDの申請状況も発表されましたが、PD全体で2070人、生物系は205人と、いずれも過去6年での最小値。3年前まで3000人近くいましたからね。そこから毎年数百人ずつ減っているようです。雇用状況もよくなってきたし、アカデミックで研究職なんてやってられないと思う人が増えてきたのでしょうか。そもそも博士課程の学生の数が減っているんでしょうか。

 

・顕微鏡のデモ

ラボが学内で引っ越しする予定になっていて、引っ越し先では共焦点顕微鏡が近くになく、そりゃないと困るということになって、購入計画が立ち上がりました。DFG(ドイツ研究振興協会)では研究機器購入用のプログラムもありまして、€200,000以上€5,000,000以下の機器に対し、50%を負担するグラントです。日本では無いタイプのグラントだと思います。

DFG, German Research Foundation - Scientific Instrumentation and Information Technology

グラントを申請するためにはいろいろとデータが必要で、デモをしてもらう必要があります。日本にいた時はメーカーや業者さんと相談して、設置してもらうことが多かったですが、今回は顕微鏡メーカーに出張することになりました。お隣MannheimにLeica Microsystemsの研究棟があり、たくさんのデモ機が置いてあるそうです。

朝、同僚とボスと一緒にサンプルをもってマンハイムに向かい、担当者から顕微鏡の説明を聞きながらデータ取り。お昼はピザをとって、午後もひたすらデータを取るという忙しい一日でした。まあ、担当者が実機を動かしていたので彼女が一番しんどかったと思いますが。。。様々な仕様の共焦点顕微鏡が7,8台あり、全部でいったい何億円するんでしょう。

最新テクノロジーに感嘆しながら、データにはまあまあ満足。あとで各仕様の見積書を送ってもらうということで、マンハイムを後にしました。しかし、これはまだまだ第1歩。比較のためにもう一社(Zeiss?)にも出かけてデモをしてもらい、申請書を仕上げて、大学の事務を説得して、DFGに申請。申請が通ってから、やっと購入手続きに入れるみたいですから、あと1年はかかりそうです。