Wunderbarな日々

妻子連れ30代生物系ポスドクのドイツ滞在記です。

ドイツでのポスドクの給料

フンボルト財団のポスドクフェローシップから大学雇用のポスドクに切り替わった最初の月。日本だと紙ぺら一枚の労働条件通知書だったのに、ドイツだと契約書全部印刷して渡されるから、結構な枚数。秘書さんに言われるまま、あれこれサインしてましたが何とかなったようでちゃんと初任給が出ました。大概の書類には一応英訳がついてますが、読んだところであまりわかるものではありません。。。

 

・雇用形態

日本とは違って、大学法人から雇用されているわけではなく、州政府の雇用となるようです。ハイデルベルク大学の場合はHeidelberg市が所属するBaden-Württemberg州の政府の雇用となり、僕の場合はボスの研究費の口座から州が給与分差し引くようになっています。ということで、給与関係のごちゃごちゃは全部Landesamt für Besoldung und Versorgung Baden-Württembergというところが握っていて、そりゃまあ、何の手続きにしろ時間がかかるわけだ。。。

 

・給料日

月初めの始業でしたが、給与は働き始めた月の月末に振り込まれました。日本だとポスドクは時間あたりで給料が払われることが多いので、月締めで計算して翌月払いが普通ですが、事情が違うようです。日本の時はゴールデンウィークになると出勤日が減るから給料も減ってましたからね。。。ドイツの場合は通常の雇用契約になって、祝日の多寡にかかわらず月給は一定で、12月1日に契約があるものは1か月分のボーナスも出るようです。

追記)ボーナスのところは嘘でした。TV-L E13の場合、1か月分の50%が満額で、さらに、そこから働いた月/12の係数が乗ります。さらに税金もろもろがかかるので。。。世の中そんなに甘くないようです。ボーナスは11月分の給料と一緒に振り込まれました。

Öffentlicher-Dienst.Info - TV-L - Jahressonderzahlung

振り込みは本当に毎月最後の日で(土日の場合はその前日)なのですが、そんな日に限って、うちのCommerzbankはシステム障害を起こしてひんしゅくかってました。下記のallestörungenのサイトで主な会社の障害に対するクレームを読むことができますが、万単位でクレームが来てました。読むとちょっと面白いですが。

Störung bei Commerzbank | Allestörungen

 

・ポータルサイト

振り込みまでいくらもらえるかわからず、ドキドキだったのですが、実は月半ばにすでに通知が来ていました。州政府の雇用が始まる前から、ID(Personalnummer)などがもらえ、下記のサービスポータルサイト(Kundenportal)へログインできるようになります(登録するとパスワード請求になり、家にパスワードが郵送で送られます。)

https://www.service-bw.de/de

給与明細や各種お知らせなどは郵送でも届きますが、ここのサイトからはそれらのPDFファイルにもアクセスでき、大変便利です。Job Ticket (市内のバスやトラムの定期券)の申し込みもサイトからするようになっています。

問い合わせもできるようで、Kindegeldnummerが書いてあるから、子供手当は州政府から出るようになるのかなと思い、滞在許可を延長したときにコピーをサイトを通じて送ったのですが、あなたがもらっている子供手当はFamilienkasseからだから、そっちに知らせろというお返事がちゃんときました。

 

・給与額

公立の大学だと、西ドイツ全域で同額の様で、詳細下記のサイトから確認できます。

Öffentlicher-Dienst.Info - TV-L - West

ポスドクだと、ほとんどはTV-L E13か、もしくはまれにE14もあるようです。TV-Lは、Tarifvertrag für den öffentlichen Dienst der Länderなので地方公務員雇用契約のような感じでしょうか。EはEntgeltgruppeで、給与の等級を表します。

Tarifvertrag für den öffentlichen Dienst der Länder – Wikipedia

僕の場合は100%の契約で週39.5時間労働ですが、75%となっている募集もたまに見かけます。博士課程の学生は50%となっていることもよくあります。

次に、Stufeというのがあって、経歴によって昇給する仕組みになっています。1年目はStufe 1、2,3年目はStufe 2、4-6年目はStufe 3という感じです。これを決めるのが、Stufenformularという書類だったようです。ずっとドイツでポスドクしてたら簡単なのですが、日本での博士課程期間中や、ポスドク期間、ドイツでのフェローシップの期間を、本職に役立つ期間として認めてもらわないと、新米扱いになってしまいます。雇用されていない期間(フェローシップや奨学金)は半分しか換算されないと記載があったのですが、なんとか計3年分の経歴は認めてもらえたようで、Stufe 3の給料となりました。ドイツだと博士課程中も雇用されており、ずっと換算されるので、もう1個Stufeが上がってたかもしれません。

次に、Zusatzversorgungということで、年金のタイプですが、自動的にVBLでした。Versorgungsanstalt des Bundes und der Länderの略で、公務員年金のようなものでしょうか。

次にSteuerklasseで、所得税の階級です。自らFinanzamtに行って変更できます。配偶者がいるとデフォルトが4(TV-L E13 Stufe 3の場合の目安19%)。配偶者がいて、両者の間の所得格差が大きい場合は、所得多い方が3(低税金、目安11%)、高い方が5(高税金、目安28%)にしておくと、いくらかの節税になります。副業の場合は6で高税金(目安29%)です。1が独身、単身世帯(目安19%)、2が母子家庭・父子家庭(目安17%)になっています。

https://sk-7ad1.kxcdn.com/thumbs/home/steuerklassen-1778x1820-min.jpg

https://www.steuerklassen.com/

最後は健康保険(Krankenkasse)で、給与の大体15.5%ですが、ハイデルベルク大学内のTKだと、15.3%です。

これらの数字、TV-L E13, Stufe 3, Steuerklasse 3, Krankenkasse 15.3 %を入力すると給与明細が出てきて、2019年だと、月額4422.39 € (Grundgehalt)が収入で、 2906.14 €が手取り(netto bleiben)になります。実際の明細と比べてみると、数十ユーロの誤差があり、どこに起因するのかは今のところわかりません。。。steuerpflicht. Bruttoの額が違っているのが原因のようですが。。。まあ、誤差の範疇だと思いますので、参考にできる目安額だと思います。

フンボルト財団の時も月3000ユーロ程度の手取りでしたが、ここから家族分のプライベートの健康保険代700ユーロを払ってました。雇用されると、健康保険代が天引きされた後の手取り額ですので、その分の昇給といったところでしょうか。日本的には月収手取り35万円だと、年収5-600万円クラスぐらいですかね。家計的にはこれに子供手当二人分(408ユーロ)が加わります。ハイデルベルクは家賃が高いので余裕はそんなにありませんが、家族4人でとりあえず生活していくのには十分で、頑張って貯蓄に回したいところです。

驚いたのは下記のサイトの最下部のところ。ここ10年、公務員の給与額は毎年2%ずつ引き上げられているそうです。

Öffentlicher-Dienst.Info - TV-L - West

www.sciencemag.org

ドイツでの政府系の研究費が向こう10年間にわたって年3%ずつ引き上げられることが決まったとのサイエンス誌の記事を読んで驚いていましたが、給与額が年2%あがるんじゃそれぐらいしないと相対的に下がっていっちゃうんですね。なるほど。

ということで、ドイツの大学のポスドク研究員の懐事情についてまとめてみました。留学前の参考になれば幸いです。