Wunderbarな日々

妻子連れ30代生物系ポスドクのドイツ滞在記です。

研究雑話(13)

・卒業1

ラボに来て4年経ちますが、3人目の学生が博士課程を修了しました。左隣に座っていたドイツ人学生です。同じぐらいにラボに加入したので、約4年で彼女の方が先に卒業。こうやってどんどん古株になっていくなぁ。

もともとハイデルベルク大学の学生でしたが、博士課程のポジションはすぐには見つからなくて、ポルトガルでちょっと研究して、奨学金を獲得してからラボに加入してきました。とはいえ、そこまで研究に情熱を燃やす姿も見たこともなく、サイエンス話に花を咲かせることもなく。まあ、自分が研究に向いてないなということと向き合う4年になったようです。それはそれでつらいか。「私は細かい実験のことじゃなくて、研究プロジェクトの管理とかの方が向いてるかもしれない」と口走ったときは、どう突っ込んでいいかわかりませんでしたね。。。プロジェクトはうまくいかず、メンターだったポスドクが辞めてからはほぼほったらかし。奨学金の延長もうまくいかず、一回ぐらいは海外学会に行きたい!と言ってもボスには相手にされず、最後の方は「どうせ私は。。。」状態でした。

代わりじゃないけど、よく引っ越し、合唱にもよく行き、運動もよくし、彼氏ともケンカして別れ、にぎやかなで楽しそうな生活をしてました。彼氏と別れてからタバコ吸いだしたときはびっくりしましたが、、、ちょっとタバコくさいだけで文句言ってたのになあ。4年も過ごせば、いろいろ変わるものです。まあ、何があっても最後にはケロッとしているのが彼女の強さでもあるでしょうか。ふさぎ込むよりは、よっぽどましです。生活と社会の基盤をしっかり持っていると多少のことはやり過ごせます。

就職活動はそんなに苦労はなかったようで、ドイツの北の方の大学で、医療と科学をつなぐコーディネータのような職につくようです。3月に博士論文を仕上げて、コロナのロックダウンが始まる前に引っ越し、4月から就職しました。6月に大学に戻って口頭試問というスケジュールでした。お祝いのパーティはコロナ中なので、控えめに野外でやりました。D論出して、就職して、あとで公聴会というパターンも結構あるようです。D論の原稿を見させてもらって、予聴会にもオンラインで参加しましたが、通り一遍の形式はできているものの、サイエンスの心も楽しさも伝わらなかったんだなあと思うと、ちょっと寂しい感じですね。まあ、新天地では心機一転で充実した毎日を過ごしてほしいところです。

 

・卒業 その他

他にも続々と同僚が大学を離れていきました。Thermo FisherやEurofinsなどのバイオ関連会社をはじめ、医療系の会社や、製薬会社、農産物関連の会社、Wileyなどの出版社などなど、皆さん関連分野に就職です。ドイツ語が怪しい人も多いですが、英語だけでも職は見つかるようで。ポスドク3年やって、DFGのPIグラント3年やってもまだまだ民間職は見つかるようで、日本よりはだいぶ機会が多いようです。ハイデルベルグに住み着いている人もちらほら。上述の公聴会後のパーティで久々に会った同僚は、会社から転勤を勧められているけど、家族のことを思って固辞しているという話をしてました。それほど魅力がある街なんですなあ。ラボ内だけでなく、研究科の中でも古株の方になってくると、そろそろ我が身の振り方も考えないといけませんね。。。

 

・改訂のための実験

身を振るにも無い袖は振れませんので、論文です。HiWiのバイトとの協同もうまくいき、2本目の論文を投稿。Reviewerコメントもおおむね好意的。よかったよかった。追加実験を仕込もうとした矢先、コロナでラボもロックダウンになってしまったので、大量のクローニングをどうしたもんかなと思っていたのですが、幸いラボの予算は潤沢ということで、思い切って遺伝子合成で全部外注することにしました。GENEWIZというドイツにも社屋がある会社を使いましたが、製造は全部中国だったのか、知らなかったな。Eurofinsと、ハイデルベルク大学キャンパス内にあるBioCatという会社にも見積もりをお願いしましたが、キャンペーン期間中のGENEWIZが最安で、数十万円の注文を獲得しました。送料込みでも安く、納期も早いとなれば、選ばないわけには行かないですが、できれば学内で済ませたかったな。。。グローバリズムですね。コロナ最中でもDHLでは中国から数日で届きました。やっぱり自前の輸送網を持ってるところは危機にも強い。おかげでロックダウンの最中も進捗を滞らせることなく済ませることができました。しかし、クローニングもそのうち外注が普通になるかぁ。覚えてきたクローニングの実験のコツが全部じゃないにしろ、過去の遺産で無駄な長物になる日も近いですかね。やれやれ。どんどん新しいことを学んでいかないと置いてけぼりになっちゃいます。

 

・新ポスドク

ドイツ・フライブルクから学位を取ったばかりの中国人がポスドクとして加入。これでポスドクの数はやっとこさ3人に戻りました。コロナと被ったので、ビザとか引っ越しとかいろいろと大変でしたが、無事加入できました。ハイデルベルクじゃ家が見つからなかったからマンハイムから通うらしいけど、大丈夫かいな。。。?とりあえずは前述の卒業したドイツ人学生のあとを引き継ぐようです。ドイツ内の移動なので、生活の変化はそこまででもないようですが、学位をとった環境と違うところで研究するのはいろいろと戸惑いもあるようで。まあ、当たり前だと思っていたことがいろいろ初めて当たり前じゃなくなるので、当然ではありますが。

どんな色を出してくれるのか、楽しみですが、僕も含めてアジア人はなんとなく人の世話になるのが苦手なようで。ヨーロッパの人たちは、わからんものはわからんといって、ぐいぐい来てくれるので相手してるだけで大丈夫ですが、アジア人は迷惑かけまいとついつい一人でなんとかしようとするので、見ているこっちがハラハラしますね。。。まあ、座席も左隣なので、目についたところはおせっかい出すようにしますが、ぜひとも自発的に来ていただきたい。

とりあえずパソコンのセットアップからですが、卒業したドイツ人は左利きでマウスを設定し、あやしげなPDF作成ソフトとか、ウイルス対策ソフトとかをたんまり残して出て行ったようで、、、消すだけで結構手間取りました。自分の時は立つ鳥跡を濁さずを心がけよう。

 

 

・学内恋愛

指導しているラボのイタリア人女子学生が、上のフロアのドイツ人ポスドクと恋仲に。どうりで去年はやたらとキノコ狩りに誘うなと思っていたらそういうことだったのか。キノコで口説き落とすとはなかなかです。来てからまだ1年も経ってませんが、恋に落ちるには十分でしたか。結構浮名が立つ人らしく、研究科内の彼女も3人目だとか!?そもそも研究科内のカップルはそんなに多くないですが。。。コロナ中はラボの中でもマスクして、距離をとれとの指示だけど、まあ、ヨーロッパのカップルでそういうわけにもいきませんので、ラボ内でもわざわざマスクをとって抱擁したりキスしたりするわけで、、、見て見ぬふりというか、見ても何も驚かぬふりです。まあ恋愛は大いに結構ですが、くれぐれも研究に影響が出ぬよう。。。