Wunderbarな日々

妻子連れ30代生物系ポスドクのドイツ滞在記です。

生活雑話(14)

閑話休題。コロナで出かける当てもないとなると、ブログの話題にも困ります。

 

・閉店

再開できる店は再開し、閉める店は閉まってしまいました。薬局(Apotheke)はどんな小さな街にもあるドイツ都市の必須アイテムですが、HeidelbergのNeuenheimの大通りBrückenstraße 35にある薬局 "Neuenheimer Apotheke"も閉店です。一番敷地面積が大きい店舗で、確かにあまり人の入りもよくもありませんでした。まあ、他にも薬局は開いてるので特に支障はありませんが。

https://www.rnz.de/nachrichten/heidelberg_artikel,-heidelberg-die-neuenheimer-apotheke-ist-geschlossen-_arid,515586.html

大きいところでいえば、Galeria Karstadt Kaufhofも事実上の倒産に追い込まれたようです。6月の時点では、172店舗のうち62店舗を閉店する計画を発表し、その後の調整で幾分か減っています。ハイデルベルクの2店舗のGaleriaは含まれていませんが、MannheimのN7は含まれているようです。Galeriaは、日本の昔でいうところのダイエー的な雰囲気で、そんなに洗練されてないけど、一応は庶民的なデパートといった感じの店ですが、規模を維持しながらの運営は難しいようで。

Galeria Karstadt Kaufhof schließt 62 Filialen – diese Städte sind betroffen

矢継ぎ早の資金注入や公的補助で、コロナショックによる影響を減らすべく政府は努力してますが、そうはいっても一時的なもの。資本主義的にも、利益を出せない事業を維持しておく道理もないですし、大き過ぎてつぶせないルフトハンザはともかく、事業を見直すのも至極当然といったところでしょうか。とはいえ、雇用は減るし、経済の規模は小さくなってしまうし、、、一発パンチはかわせても、ボディブローはじわじわ効いてきます。

 

・電子ピアノを買う

5歳の子供がピアノを習い始めることに。いやまだ早いかなと思ってたんだけど、なんか始めることになったらしい。だって、まだ幼稚園児だぜ?まあ、そんなこと言ってちゃいけないですけど。

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日本式での音楽教育をお願いして、教科書も購入。Amazon.co.jpだと免税価格の1100円で、送料は1480円とお安くないですが、一週間ぐらいでDHL Internationalでドイツまで届きました。すごい。。。

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出生祝いで頂いたKAWAIの25鍵盤ミニピアノ(1106-5 )でずっとごまかしていたのですが(さすがKAWAIという感じで値段の割にはかなり出来がいいです。)、ガミガミ怒られながらも順調に成長して、ついにキーが足りなくなってしまい、ピアノ教室の先生からもいい加減買いなさいと迫られ(そりゃそうだ)、購入を決断し、品定めに入りました。電子ピアノでもいいですけど、せめて88鍵にしてくださいとの先生からご指示。そりゃそうだけど。。。88健ともなると、さすがにおもちゃじゃなくて、ちゃんとした楽器がほとんどですね。

自分が小学生の時は、気が付いたら家にあった66健のキーボードを、暇なときにひたすら自分で弾いてただけ、特に習いに行くこともほとんどありませんでした。なんというか、楽器は弾きたいから弾くもんだったので、宿題だとか、課題だとか、そういうのってよくわからないんですよね。まあ、まじめに習わなかったから何のものにもならなかったですけど。ましてや小学校入学前の子供にそれを求めるのは無茶なのもよくわかりますが。おだてて練習させて、叱って、ほめて、、、こりゃ大変だ。

Stage Pianos – Musikhaus Thomann

Thomannという楽器屋さんがよさげでした。自社製ブランドの電子ピアノも安めの値段設定でしたが、まあ、ここは日本企業応援ということで、YamahaのP-45 Bにしました。P-125もよさそうだけど、、、予算オーバーかなぁ。

www.thomann.de正規品は現時点で418ユーロ。買ったときは円高だからもうちょっと安かったけど。B-stockというB級品もあり、返品されてきたものを動作確認して少し値引きして販売しているようです。

www.thomann.de現時点389ユーロということで(購入時は365ユーロ)、10%引きぐらいでしょうか。楽器屋だし大丈夫そうということでB-stockを購入しました。

届いた感想はまずデカい。存在感抜群です。そしてキーのタッチのリアルさにびっくり!キーボードとはわけが違うなあ。。。こんなもん子供のころ家にあったら毎日弾くわぁ(そんなこともないだろうけど)と思わず感激し、子供を差し置いて夫婦でかわるがわる楽しんでます。親がうまそうに弾くと子供はむすっとした顔してますが、、、なんならちいさい方もやってきて家族四人でピアノ奪い合ってますが。子供の方は相変わらずピーキーいいながらですが、いつかはまじめに音楽と向き合える日が来るといいですね。

 

・リズと青い鳥

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京都アニメーション(京アニ)の放火事件から1年が経ちました。少しは支援になればと、配信サイトでいくつか作品を視聴しました。その中で、『リズと青い鳥』という作品が繊細で美しくて心打たれました。VPN Gateでつないで、ドイツからdアニメストアで見ましたが、ドイツのAmazon.deでも配信やdvdの販売をしているようです。今時すごいな。。。『響け!ユーフォニアム』の方はドイツじゃ売ってないようですが。やっぱり正統派の部活モノは日本人にしか通じないかなぁ。題材の絵本は架空のものですが、その舞台はドイツ(かオーストリア)の様で、劇中の絵本の表紙にはドイツ語で「Liz und ein Blauer Vogel」と書いてあったし、パン屋さんの窓ガラスにもBäckereiと書いてありました。ドイツ版のDVDのタイトルは定冠詞derになってるから、ein Vogelはさすがに寂しすぎた?

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 武田綾乃作の「響け!ユーフォニアム」シリーズの小説が原作で、京都アニメーションが2015年、2016年に2クールにわたってアニメ化していました。高校の吹奏楽部の日常を描いていて、まあ、言葉は悪いですが、題材としてはよくある学園・青春ものという印象です。涼宮ハルヒシリーズを手掛けた石原立也監督が、けいおんシリーズを手掛けた山田尚子とタッグを組んでということで、京アニらしく、テレビアニメらしく、ディテールの描写にこだわった演出がされた、起承転結がしっかりとしたアニメでした。

本作はその原作の中で、オーボエの鎧塚 みぞれ(C.V. 種﨑敦美)と、フルートの傘木 希美(C.V. 東山奈央)の二人の話を抜き出して、テレビアニメシリーズとは違って山田尚子が監督を務めた作品で、原作・過去のアニメを知らなくても大丈夫な独立した映画として制作されたようです。


『リズと青い鳥』本予告 60秒ver.

導入から、普段のテレビアニメシリーズとは違うんだなと、くぎ付けにされます。釘を刺される?キャラクターデザインもガラッと変わっているようで、普段のシリーズのように輪郭や色彩がはっきりとしてきらきら輝くのではなく、静かな空間に二人の足音の響くような、柔らかいデザインになってまるで別人。キャラクターありきではなく、描きたいもののためのデザインってすごいなあ。前作もそれなりに売れただろうに。オープニングでは淡々と歩くシーンが続くので、髪の揺れ方や、姿勢や、歩き方に自然に目が行きます。けいおんシリーズに引き続き、本作もひたすらに女子高生の足・脚・腿。足は口ほどにものをいうといわんばかり。もちろん足だけじゃなく、一瞬の表情やセリフの間合い、視線・視点の置き方や、揺れ、ぼやけなどなど、主人公たちの感情の機微な変化が手に取るようにわかる描写が、漫画みたく茶化したりふざけたりせず、延々と90分間続きます。中高は男子校で育ったので、女性の感情変化には疎い方ですが、それでも伝わってくるほどで、なんというか、その表現力は小説の文章や実写版の映像では不可能なレベルまでに達してると思うんですよね。最後のみぞれの覚醒シーンのオーボエ演奏は特に圧巻で、思わずうるっと来てしまいました。言葉を超えた音楽の力、すごいです。

中高生がテーマになりやすいのは、未来、友情、恋愛、家族、学校、現実など、様々な問題を同時に抱えてるからだと思うんですが、吹奏楽部のようなところでは特に、楽器のうまい下手というのは、これでもかとはっきりわかる物差しで、すべての人間関係を縛ります。プロのCD聞いて、羨望というわけには当然行かなくて、相手は自分と年齢も変わらないわけで、自分のふがいなさを悔いたり、過去を嘆いたり、妬ましくなったり、あきらめたり、頑張ろうと気合が入ったりと、そんな入り混じった感情を練習のたびに思い起こされるわけで、まあ、いろいろ単純ではないですよね。聞くだけでわかっちゃうというのも残酷なところです。大人になるにしたがって、だんだん慣れてきちゃって、今更「あっ、今のパッセージ下手と思われた」と気づいたところで、「すみません、音程が悪くて~」と適当に予防線を張って、感情の起伏は抑えられますが、本作は、音楽に限らず、些細な一言や出来事に心揺れるまだ大人になる前の主人公たちの様子が丁寧に描かれていて、甘酸っぱい気持ちになります。まあ、研究発表だって露骨に物差しで測られますが、一応物差しが一つじゃないので、気持ち的に逃げ場所はあるというのが救いでして。本当は今だって、自分と正面から向き合って、自分に研究の才能があるのかなんて考え始めたら逃げ出しちゃいたくなっちゃいますよ。。。いろんな人のいろんなすごい才能を見せつけられて、とりあえずはコツコツまじめに学業にいそしむかといって来たところで、結局は才能を見せつけられるだなあ。まあ、そりゃ才能だけがすべてじゃないし、才能だと思っていたら努力だったりすることもママありますけれども。それはさらにショックか。30代ポスドクなので、まだなんとか自分の居場所を見つけていく最中ではありますが。

日本は吹奏楽部の部活が盛んなのですが、部活で楽器やってましたけど、卒業と同時にやめちゃいました、という人が多くて、残念です。コンクールの功罪なんですかね。結局は音楽の楽しいところが根付かなかったとすれば、それはやっぱり教育方法が間違ってると思いますね。聴く楽しさと、弾く楽しさはやっぱりぜんぜん違いますよ。甲子園も同じだと思います。セルジオ越後さんなんかもよくおっしゃってますが、中高の部活の補欠ってやっぱりおかしい。各学校代表で1チームしか出れないのもおかしい。二軍でもBチームでもなんでもいいから、絶対に本番に出た方が良い経験になる。プロじゃないんだから。本作は二人の少女の関係を描いてるからいいのですが、本編アニメシリーズのようにひたすらみんなで揃えて、軍隊式に指導者の要求に頑張って応えるのは、なんだか日本だなという感じで、ドイツで映像作品が発売されていないのもうなずけます。意味わかんないですからね。練習中はひたすら指揮者からの一方的な指示で、まあ、原作者の経験に沿ってるんでしょうけど、音楽って本当はいろいろ考えながら試行錯誤してやるのが楽しいと思うので、図らずも日本の音楽教育の暗い面を描いてしまった感じでしょうか。いやまあ、そんなことやってたから、楽器の成長は遅いし、結局は大してうまくはならなかったけれども。でも今でも楽しんで続けられています。もちろん、原作にとっても吹奏楽部はあくまで題材で、音楽が描きたいテーマではないのでしょうけれども。

なんの文章だかよくわからなくなってしまいましたが、おすすめの映画ですので、ぜひ機会を見つけて一度ご覧ください。山田尚子監督と京都アニメーションの魅力がこれでもかと詰まっております。