Wunderbarな日々

妻子連れ30代生物系ポスドクのドイツ滞在記です。

研究雑話(18)

・海外でさきがけ研究費を使う。

国内の機関なら事務にお願いすればよさそうなものですが、海外だとお互い初めてのことが多く、手探り状態です。

1)契約書締結

契約は大学本部の管轄で、大学側とJSTが折衝します。知的財産権(IP)や、間接経費などのところで何回かやりとりがありましたが、無事になんとか丸く収まりました。11月研究開始とのことでしたが、実際に契約書が締結されたのは12月に入ってからでした。

 

2)研究費の受け入れ準備

大学側では研究費の受け入れの準備。書類どっさり、、、。研究費専用の口座を開けてもらって、Übertragung von befugnissen
Anordnung und feststellung "Sachlich Richtig"という書類で、だれが支出に署名できるかを申請します。署名は超大事なんだなあ。いろいろ手続きをお願いすることもあるので、僕本人に加えて、教授や秘書さんもリストに加えます。研究費受け入れの申請には研究科長のサインも必要ですので、ハンコリレーじゃないですが、署名リレーです。

次に、どういうお金なのかについて、いろいろと申告。何がどうなったのかよくわかりませんが、EU外からの研究資金は消費税の免税を適応できるそうです。いくつかの高価なものについては適応して、免税で購入できました。この年末はコロナの影響を受けて消費税が一時的に19%から16%に下げられていて、、、いやぁ、こりゃ会計手続きややこしそう。

 

3)郵便が届かない

12月初めに大学の郵便から書留で日本へ署名した契約書を送ったのですが、郵便局がパンクしてたらしく、いつも来るはずの書留の追跡番号は待てど暮らせど帰って来ない。。。学内の人に問い合わせると、郵便物は郵便局の人が持ってったけど、君のだけじゃなくて追跡番号は全学で帰ってきてないと衝撃的な事実。いろいろ電話かけましたが、番号がわからないことには何も埒があきませんでした。。。

結局は無事に届いたのですが、着いたのは1月下旬と、届くのに40日以上かかってしまいました。心臓に悪い。ということで、

・年末に国際便を送るのは時間に気を付けましょう。
・大学郵便は、研究費番号を知らせると、通常は郵便局の人が郵送費を研究費から直接請求してくれるので便利ですが、書留などのように、もう一度番号を返さないといけないとかとなると面倒くさいからか、後回しにされるかもしれません。
・この一件以降はいったん立て替えて発送して、あとで払い戻しを請求するようにしました。事務の手続きを増やしてしまうのは申し訳ない限りですが、、、。Deutschpostのウェブサイトでも国際書留は簡単に注文でき、追跡番号も即時に発行されますので、荷物がどこに行ったか分からないというようなことはありません。

 

4)請求書の発行

てっきり双方が署名した契約書が郵送でJSTに届けば研究費が振り込まれるのかなと思ってましたが、そういうものじゃないらしい。契約書の郵送はあくまで保存用で、契約自体はPDFのスキャンで締結で確認してるので問題ないが、研究者の機関から請求書を発行しないといけなかったらしい。。。こういうのはてっきり大学本部がやってくれるのかと思いきや、請求書は各研究室で勝手に発行してくれだって、そんなん知らんよ。。。全員がお見合いしてました。

慌てて秘書さんにお願いして請求書を準備して、これも郵送で原本送付しました。あくまで日本円建ての請求書だそうです。FedExだと100EURを超えますが、DHL International ExpressEasyだと50ユーロぐらいで、2日で届きました。急がない書類はDeutschpost International Einschreibenで10ユーロもかかりません。10日以内には大体届くようです。

請求書が届いたのが1月末、2月末にやっと研究費が振り込まれました。ふぅ。

 

 

5)研究費を使う

家庭の銀行口座とは違うので、お金が振り込まれなくても、残高マイナスのままでどんどん使ってよかったらしいですが、初年度で研究費がどう振り込まれるかもよくわからなかったので、控えていました。請求書を出してから、もう大丈夫そうだなと思い、2月から支出を始めました。3月末が年度末ですので、買おうと思っていたものを次々に発注です。

日本の大学と同じで、ドイツの大学でも金額に応じて手続きが違います。一品500ユーロ以下のものは、各研究者で自由に発注。500ユーロ以上、5000ユーロ以下は、見積もりなどをとって、なぜその業者にしたのかというDokumentation für dezentrale Beschaffungsvorgängeという書類を出せば、各自で発注可能です。5000ユーロ以上の機器は、大学本部のBeschaffungsstelleからの発注となり、入札的なものが必要となり、いろいろな書類をへて、手続きが完了するまでは通常6週間かかるそうです。。。納品間に合うかなあ。。。このあたりはもうラボの人におんぶに抱っこでいろいろ教えてもらうしかありません。抜け道的なものがあるので、相談しながら上手いごとシステムを使い分ける必要がありました。一つだけ5000EUR超の機器を購入しましたが、書類の数が半端なく、しかもドイツ語だったりするので、もうおまかせっていう感じでした。なお、50万円以上のものはJSTの資産登録も必要になります。

支出した金額の30%以下の金額が間接経費として大学にとられ、いろいろ差し引かれたのち、PPKという名目(なんの略称なんだろ。。。)で幾分か研究者側に戻ってきます。これは文房具とか、研究に直接関係ないものでも自由に使える貴重なお金だそうで、他の資金の項目で支出しづらいものはこれでまかなうようです。帳簿はつけますが、報告の義務はありません。

 

 

6)会計報告

年度末から30日以内に会計報告を提出する必要があります。これも国内なら、はいよろしく!ですみそうですが、ドイツだと誰も経験がないので会計担当者と相談しながらさきがけのマニュアルと睨めっこで、初年度はいろいろ苦労しました。英語版の契約書と日本語のマニュアルと書いてあることが微妙に違ってたりするので(おそらく英語版が逐一アップデートされていない)、その度にJSTに確認をとりながらすすめていました。年度末の頃にはJSTから会計報告書作成上の注意事項が英語でも届きました。たとえば、ハイデルベルク大の通常の会計システムでは請求書単位でエントリーしているようですが、JSTへの会計報告書ではどのアイテムを何個購入でいくらかの記入が必要で、もう一回請求書を読み直して記入したりとまあ、いろいろありました。会計担当者はあくまでラボの秘書さんですので、「なんでこんなことしなきゃいけないのよ!」と思われないよう、背景やねらい、文化の違いを丁寧に説明しながら、ひたすらお願いするしかありません。

JSTからなんとかOKをもらい、会計担当者のサインが入った原本をJSTに送付してようやくひと段落です。ふぅ。。。

勝手が分からずにいろいろ苦労はしましたが、要求自体は穏当なものだったかと思います。他の大学はどうかわかりませんが、ハイデルベルク大じゃ検収なるものをほとんど見かけたことがありません。買ったものがちゃんと届いているかどうかを管理するのはあくまで研究者側の責任で、大学側がいちいち口出すことではないようです。日本のようにメーカーと研究者の間に業者が入りませんので、購入したものは宅配業者によって直接ラボに届けられ、請求書もいまだに郵送です(いい加減そろそろ大学のシステムが電子化するらしい)。他のラボの請求書やものが紛れ込んでることもしばしばです。もちろん不正がないわけでもないでしょうが、研究費を無駄遣いしても論文書いて次の研究費を稼げるなら、そりゃもう勝手にどうぞという感じな気がします。無駄遣いは研究者側の損になるはずで、それを防ぐのは研究者側の役目といったところでしょうか。まあ、そんな単純でもありませんけれども。

通常はこんな感じですが、ランダムに研究費をくばる団体から監査が入ることがあり、その時は大変です。学内の共有施設を当たり前のように使っていたのに、急に他の会社の見積もりとちゃんと比較してない!、請求書の中身が曖昧!とかいろいろ言われて、ボスが釈明に追われておりました。

 

7)更新

契約は一年ごとの更新。次年度の研究計画、予算計画を承認してもらって、年度末前になって更新の契約書を再び署名しあって、研究費の請求書も振り出します。

 

さて、買うものは買ったし、あとはデータにして論文にしないといけませんな。。。