Wunderbarな日々

妻子連れ30代生物系ポスドクのドイツ滞在記です。

フンボルト財団(申請から採択通知まで)

フンボルト財団(Alexander von Humboldt-Stiftung)の奨学金に応募しました。

特に誰かから教えてもらったというわけではないですが、ドイツでポスドクしたいなあと考えていろいろインターネットで検索しているうちに知りました。応募書類を準備しているときに、ドイツ研究留学説明会が京都府立医科大学内で開かれると知り、たまたま京都に出張中だったので、ふらっと参加はしてきました。全体説明には間に合いませんでしたが、元奨学生による座談会が分野別に開かれていて、いろいろとお話を聞くことができました。特に何か秘訣があるとかそういうことではないですが、ドイツ留学中の生活についても聞くことができて意義ある会でした。あと、一にも二にも採択の是非には研究計画が大事だということでした。まあ、それも至極全う。西川伸一先生がいらしゃっていてびっくりしました…あっブログの人だ!と思わず。

 

・応募書類

Alexander von Humboldt-Foundation - Homepage

本家のサイトからたどって応募します。僕の時はまだdocファイルをダウンロードして記入してましたが(いろいろ機能が入っているwordファイルで編集に結構時間がかかってました)、最近システムが変わってオンラインでの記入になったようです。。もっともそのせいで応募が殺到して、審査に今すごく時間がかかっているようですが…。ざっと見たところ

・Research Area Indexがわかりやすくなった。もっと古風な分類でどれを選んだらよいか迷ってました。

・研究経歴で、何パーセントの時間を研究に費やしていたか(教育とかではなくて)と聞かれなくなった。

・あなたの国の発展に、あなたの研究成果がどのように役立つかを聞かれなくなった。僕の場合基礎研究というのもあって、これは結構答えに困りました。まっとうそうなことを二、三行書いてあまり深入りしませんでした。

・expert reviewerが三人から二人になった。3人目はなかなか見つからないですからね。。。フンボルト会員の方がいいんじゃないの?という意見が座談会などでも出てましたが、自分のことを知らないと評価できないわけですから探そうと思って見つかるものじゃないですし、僕の場合は3人とも非会員でした。

・英語教師による英語能力の証明書が不要になった。

が変更点のようです。だいたい???というところが修正された感じです。開始日は後でも変更できますので、とりあえずの予定でよいと思います。ドイツ語の語学研修は興味があったので2か月で申し込みました。

 

もちろん研究計画書(Research outline)に一番時間を費やしました。どれだけ守られてるかはわかりませんが、申請者の自発的なアイデアが求められるということもあって、自分なりに新しいプロジェクトを一所懸命考えて提案しました。ドラフトを書いて受け入れ先の先生とメールで4、5回やりとりして、毎回真っ赤っかに直されました。何しろ会ったこともない人でしたから、この過程を通じてだんだんと留学しても大丈夫なところなんだなと不安がぬぐえました。一応、最初に提案したアイデアは採用してもらえて、具体的な材料や道具などでいろいろ書き加えてもらった感じです。もちろん、表現の仕方やロジックなどは徹底的に直されましたが。。。最初、The current state of researchを自分の今の研究かなと思って書いちゃって、「たぶんそれ、これから研究を始める分野の現状(=Introduction)だと思うぞ」と言われたときは赤っ恥でしたね…。fullの参考文献はいらないということでしたが、ないとわかりにくいかなと思い、つけました。そこだけ1ページ超過しました。

ほかのところでは、学位論文は日本語で書いたので、英語でSummaryを作りました。図表の番号や、どの部分が論文としてすでに出版されているかについて注釈をつけて、文章だけで目次+数ページに簡易なものとしてまとめました。もっとちゃんと訳してもよかったかもしれませんが、時間が足りませんでしたので。。。あれこれ書類をつけて、当時は郵送でしたのでEMSの封筒に日本語の学位論文2冊を詰め込んで(これ読むのかなあ?)、発送しました。書類のチェックが済むと、いつ結果が出るのかの見込みが伝えられます。これであとは待つだけです。

実際は送付した後に、論文を投稿しましたので、コンタクトを取ってPublicationリストを変更してもよいかと聞きました。まだ審査前だからいいよとのことで、そこはメールで送りました。CVにも誤りが少しあり、さらに受け入れ先のボスがいろいろ聞きまわったところによると、フンボルト財団は研究だけでなく人となりも見るから、課外活動などもCVに入れておくようにと連絡が来てましたので(郵送した次の日ぐらいに)、そのあたりも書き込んで、メールで送付しました。

 

・採択通知

申請から五か月後にメールが来て、おめでとうございますとのことでした。受け入れ先にも連絡がいったようで、受け入れ先からも、おめでとう!と連絡が来てました。その約一か月後に"deliverly of award documents"がくると書いてあったので、郵送かと思い毎日研究室の郵便箱をチェックしてたのですが、ページ数が多いPDFファイルがメールで約一か月後に送られてきただけでした。オンライン上にも挙がっているようですので、実際のプログラムがどうなっているか興味がある人はのぞいてみたらよいと思います。版はコロコロ変わるようです。

https://www.humboldt-foundation.de/web/docs/F-703992091/guidelines.pdf

書類も届き、現所属先の教授と離日の日程調整です。引継ぎやら、残った仕事のまとめ方やら。比較的円満に合意が得られたかと思います。結局申請当時の日程から、2か月先に延ばしました。受け入れ先の先生はいつ来てもいいよということでした。フンボルト財団に問い合わせたところ、こちらから返信する受託書(Acceptance form)に赤線入れて日付を変更したらいいよということでした。採択通知から一年以内には出発する必要があります。また、受け入れ先の先生の承諾もいるということでしたので、メールを一通書いていただきました。

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海外学振の方は知り合いにも採択者がいるし、大体は勝手がわかるのですが、フンボルト奨学金はあまり情報がなくて、一つ一つ大丈夫かなあと不安になりながら進めていきました。歴史あるしっかりした財団ですし、応募に必要な情報は公開されていましたが、採択率30%ぐらいっていうけど、どのぐらいのレベルなんだろう?とか、分野転向するような申請書なんだけど、こういうのは採択するんだろうか?とか。

僕の場合、筆頭著者としてはトップジャーナルや姉妹誌に論文はなく、中堅ジャーナルに1本と、もうひとつ小さな論文でした。分野転向の場合は、今までの研究をアピールする欄がなく(Introductionで自分の論文の内容を紹介できないので)、どうかなと思ったのですが、添付した公開済み論文を読んでいただけたのか、あまり重視されなかったのか、なんとか採択していただけました。そういう人は

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がいいんじゃないの?と複数の人から言われましたが。。。気が付いた時には申請期限が過ぎていて、また来年でした。いつでも申請できて、年3回合格を出すというのがフンボルト財団の使い勝手の良いところでしょうか。

研究計画書がしっかりしていて、面白い課題に取り組む申請書になっていれば、ほかのいろいろな心配をしなくてもちゃんと見てもらえるんじゃないかなと思います。