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Wunderbarな日々

妻子連れ30代生物系ポスドクのドイツ滞在記です。

研究雑話(1)

・博士課程の学生の論文が受理

学生の論文が受理されたようです。何回かリジェクト食らってたみたいですが、ストリーを変えて、本人も納得した形になって投稿したら、好意的なコメントが来て、追加実験をいくつか加えたら、それなりにいいジャーナルに驚くほどあっさりと受理されたようです。ストーリーがやっぱり大事ですね。データをいっぱい出したい気持ちや、本当のいきさつをさておいて、読者が読んですんなり納得できる、無理のないストーリーにまとめるのが大事です。結局Reviewerも主張が裏付けられているかどうかを判断するだけで、筋が通っていたらそれ以上の批判は難しいものです。まあ、あんまりこじんまりしてると上のほうの雑誌は狙えないので、ある程度は匙加減の問題もありますが。僕の身の回りでは、今回の学生と同じように、「やっぱこれぐらいだよね」と落ち着くところに落ち着いて受理されることが多い気がします。あれこれまとめて大きい話をでっちあげるのはなかなか難しい。どっかでは勝負しないと、いかんのでしょうが。

受理が決まって、学生さんがケーキを焼いて持ってきてくれました。祝われる人が何か準備するのがドイツ流のようです。いつかは僕も・・・?

 

・明日?

ふらふらとボスがやってきて、「セミナーの予定入れ忘れちゃったんだけど、あしたできる?」「いやぁ、さすがにきついっす・・・」と答えたらセミナーが一週間お休みになって次週からになりました。明日って、そりゃないっすわー。

 

・最初は大変

D1の学生が、初めてJoint Lab Meetingでほかのラボの人の前でプログレス報告をすることになりました。二日前に練習ということで、リハーサル。ところがどっこいとてもみんなの前で聞かせられるレベルじゃありませんでした。おいおい、今までどんな指導してたんですか、ボス。結局ポスドクが引き取って、指導して、ようやく様になりました。セミナー終わった後にポスドクのところに駆けつけて「お疲れだったねー。すごくよくなったよ」と声かけたら、「二日間で5、6時間ぐらいかかったよー」と疲れ顔。こういうのはまあ、やりがいはあるけど時間かかるし、どこまで首を突っ込めばいいのかというのはポスドクにとって難しいどころ。やっぱりボスがちゃんと指導するのが筋ではないでしょうかねえ。

 

・学生実習、再び。

大学院生の3週間の実習コースを、僕も入れて二人のポスドクで面倒見ることになりました。今年はなんかこんなんばっかりだなあ。in situ ハイブリダイゼーションをやるっていうので、僕も今まで体験したことなかったので勉強にいいだろうということで引き受けました。うちのラボが担当する学生は二人。ロシアとトルコから来たそうです。国際的ですね。

形式としては、経験すべき実験のリストが渡され、それを各ラボでアレンジして3週間に収める感じです。特にテーマを定める必要はないらしく、あくまで実習。評価の50%はレポートではなくプロトコルをまとめることになっています。残りの50%は実習中の働きぶりです。

ラボでもあんまりやったことのないin situ ハイブリダイゼーションを、予備実験なしに突っ込んでみたのですが、結局シグナルはあまり得られず、戦いには敗れた感じ。。。一通り手順は抑えたので、実習としてはこれでよいらしいですが。まあ、かといって二人の学生のためにあれこれ条件出しの予備実験というのもポスドクにとって確かに労が多すぎるし、難しいところです。二週目、三週目になってくると、学生も、指導するほうもだんだんだれてきて、お互いモチベーションがあまり上がらない感じでした。もうマスターの学生だからほったらかしてやってみようということだったのですが、ちょっと時期尚早だったかな。「えっーそうするー!?」みたいなミスもいくつかやらかして実験があまり予定通りには進みませんでした。やっぱり誰かつきっきりで見てあげないといけなかったかなあ。でもプロトコル渡してあるんだからしっかり読み込んできてほしかったなあ。最後らへんになると、各操作ごとに確認を求めるようになってきていて、あんまり頭を使いたがらない感じでした。失敗続きで怖気づいたのもあるのでしょうが。

最終日に学生を返すと、指導する方の二人は「疲れたねー」と顔を見渡すほどでした。「この三週間は長かったねー、自分の実験ほとんどできなかったよー。」と異口同音。僕のほうは負担軽減に努めたつもりでしたが、彼女の負担は確かに相当なもの。いろいろイライラしながらも本当によく頑張ってました。ポスドクが大変なのはどこも変わらないようです。

 

・査読

ボスから査読手伝ってくれる?と聞かれ、ちょうど上記の学生実習中で自分の実験もあまり入れ込めなかったので引き受けました。まあ、あくまで外様のフェローシップポスドクですからねえ。。。役に立てるところは役に立っておかないと。Scientific Reportsからでした。10日以内に返せとか、なかなかせかしてきます。インパクトは求めないので、手法が適切か、主張がデータに裏付けられているかなどを判断してくださいというお達しです。数日かけて読んで、1日かけてレポートをまとめ、ボスに送信。30分程度論文の内容や評価について議論し、あとは任せました。後日ほかの人の査読レポートとともにエディターの決定が伝えられました。ちゃんと二人に回してるのねー。

Scientific Reportsの2015年のインパクトファクターは5を超えており、全科学分野を対象にした雑誌では、Nature, Science, Nature Communications, PNASに次いで5位だそうです。いろいろ批判もあります(下記リンク)。が、基本的にはこういうジャーナルがあったほうが科学にとっても、いいと思います。もちろん、玉石混交は否めませんのでちゃんと気を付けて内容を読み込む必要がありますが、それはほかのジャーナルだって同じです。科学者側にとっては、ジャーナルによる権威づけがなくてもいい成果発表もありだと思います。とにかく早く公表したい場合もあれば、読めばわかるすごい発見ということもあるでしょう。結局論文は中身勝負ですから、本当に重要で本当の発見ならどこに出ていようと読み継がれます。

More on Scientific Reports, And on Faked Papers | In the Pipeline

ただ、個人的には印刷物に対する信仰がまだ残ってまして。。。できれば印刷される媒体に投稿したいと考えています。こうやってだんだんと時代に取り残されていくんでしょうなあ。。。若い子たちがオンラインのWebメールやIMAPやだけでメールしてるのを見ると、POPサーバーでどっかのハードディスクに落としとこうよと思わずにはいられません。オンラインなんていつ消えるかわからないし、校正編集者が頑張るのもやっぱり印刷されるからというのもあるからではないでしょうか。論文という作品をどう仕上げるかという過程で、編集者や査読者も重要な役割を果たすと思いますので、彼らが頑張っているようなところに投稿・発表することで、作品がより磨かれていくと思います。そんなことを思いながら、時間かけてちゃんと査読してみました。もう一人のReviewerさん、ちと読み込みが足りてなかったぞ!

オンラインメディアが跋扈して既存の新聞などのメディアが金銭的に脅かされ、結局ちゃんと取材してしっかり書くところ減っていくのは、あんまり好ましくないと思います。それと同じように、商業目的ではない学術論文業界の各雑誌が編集者、査読者(雑誌の評判と査読のレベルは直結すると思います)などを維持し、なんだかんだと言いながらそれなりの投稿数・インパクトファクターを残していけるかどうか。ぜひ頑張ってほしいところです。