Wunderbarな日々

妻子連れ30代生物系ポスドクのドイツ滞在記です。

研究雑話(14)

・学生、学生、

グループリーダーたちが学長宛てに要望を出して、ようやくラボの人数制限なしでの再開が認められるようになりました。7月20日から再開なので、ロックダウン後約4か月後のことでした。換気を4倍にすることを条件にしたらしいけど、、、なんか変わったか?まあ、大学の本部の方はやっぱり緩和に二の足を踏んでいたらしく、こういう規制緩和も、ボスたちの苦労の末勝ち取ったものかと思うと、少し感慨深いです。適度に距離を取ってマスクをつけることは続けますが、各部屋の予約ではなくて、出退勤を記録するだけで済むようになったので、手間もだいぶ省けます。

コロナ渦にも慣れたぐらいになると、続々とラボローテーションのオファーがボスのところに舞い込んでいるようです。どのラボも実働人数を減らしていて、なかなかラボに入り込むのも大変なようで。。。ボス的には大学は教育機関だからとできるだけ受け入れるようで、気が付いたら博士課程の学生とポスドクを合わせて10人のラボになってるんですが、学生が7人ぐらい別々に来る予定になってるので、もうラボ総出ですね。いくらなんでも混み過ぎなんじゃ。。。

僕が担当することになったのはエジプトの大学から来た修士学生ですが、打ち合わせからして話す距離が近い。。。イメージングやりたいです!というから詳しい話を聞いてみようと思ったのですが、ただ単にウェスタン以外の何かがやりたがっただけの様で、特に何かに興味があるわけでもなかったらしい。「授業の発表では結構いい感じだったよ」というボスの推薦の言葉が風前の灯火です。うちのボスが人を見る目がないのは今に始まったことではありませんが。

ローテーション以外にもぜひ何かさせてくれというので、DNA抽出やらPCRやらをやらせてみたものの、普通の学生の3倍ぐらい時間がかかるうえに、数を間違える、濃度を間違える、説明を聞いてない、途中で投げ出して帰る。。。どうしようもないな、こりゃ。ずっと携帯いじってて、作業中は必ずイヤフォンで、話聞いてる時も外したイヤプラグからずっと音漏れ。話すとぐいぐいくるのでやる気はないわけではないようですが、いかんせん根の性格が適当なので、どうしようもありません。思わず「集中しろ!」とキレちゃいました。あぁ。怒るのは疲れるうえに後から後悔するのに。(折木奉太郎がうらやましい。)

「君が面倒みた前のギリシャ人学生よりいい感じだったよ。」ともボスは言っていましたが、僕的にはこのギリシャ学生を結構かっていました。なんというか、やり始めたらとことん追求という研究者の心構えはあった気がします。しかし、ライティングが全然だめで、発表も思い込みがいろいろ多くてだめで、評価となると冴えない感じでした。以前面倒見た学生たちもそういう傾向で、スマートになんでもパッパッとこなせる人は、研究の本質には興味がないし、こだわりがあって深堀できる人は大体プレゼンやライティングが下手で伝わらない。日本でもそんな感じだったので、研究者気質も世界共通といったところでしょうか。両方できないと生き残れませんが、気概と違ってスキルは磨けるので、やっぱり気概が大事だと個人的には思います。そのあたり現ボスは逆で、人の評価がいつも僕と入れ子になります。

件のエジプト学生的には、将来いい職をゲットしたい→今の自分のCVに足りないものは何か→イメージングのスキルが必要→授業でイメージングやってたラボでローテーションしよう、という思考回路で、それ自体は一見至極全うですが、RPGの攻略みたいになっていて、結局君は何がしたいの?ということになりかねません。実際、特に彼もイメージングに興味があるわけでもないようで、実験中もずっとレポートをどう書けばいいのかばかリ考えて効率的にやろうとします。それ自体は間違ってないですが、さっきの見本画像と全部同じ設定で撮りました!と一つ一つの設定に興味がないので仕組みは学べないし、データをよく見ないから画像は真っ暗で使い物にならんし。。。今時論文はだれでもアクセスできるわけで、本当に優秀な学生は、論文いっぱい読んで既にこういうサイエンスしたいと思っているところがあるので、話すと違いがすぐに分かります。

まあ、そうはいっても、ローテーションはローテーション。やることやって、レポートを書いてくれたらそれでいいわけですが、そのあたりの考え方の違いも身に着けてくれたらいいのですが。教育者としては良くないですが、早く3週間過ぎてくれと、省エネモードで願うばかりです。

 

・査読

人生で初めて査読の依頼。ハイデルベルクに来る前に日本でやっていた分野からです。ボスたちにとってはただの面倒であることも多いですが、若手にとっては、たとえマイナージャーナルでも、少しだけ研究者として認められた感じもしてちょっとうれかったり。CVに書く人も結構いるようです。が、そう思ったのも束の間、受理して本文読んでげんなり。。。なんじゃこりゃ。中国の研究グループの論文ですが、RT-PCR、ウェスタン、抗体染色だけなのに、英語は無茶苦茶な上に論文の形式になってない。まあ、初めてだし、引き受けたからにはまじめにやりましたが、その後3度の改訂に付き合わされ、最終的に受理。ひたすら校正作業をやった挙句に、大して得られた情報もないし、こりゃ確かに割に合いませんね。

査読投稿サイトにはpublonsへ知らせますか?というオプションがついていて、なるほど、今時誰がどれぐらい査読したかを集めるサイトも登場したんですね。連携してないジャーナルでも、エディターからのメールを転送すればカウントしてくれるようです。いやしかし、改訂版の査読も1カウントされてしまったが、これは水増しのような。。。

ことは続くようで、老舗ジャーナルからも査読の依頼。受理してみたものの、これも中国からのなかなかひどい論文で、Methodの記載をさぼりすぎてて、何をしたのかがわからんうえ、論理の飛躍もひどい。今時は査読者は掲載すべきかどうかはコメントしないことになっているので、問題点を指摘して主張はサポートされていないとコメントしました。他の査読者も似たような感じで、エディターがバッサリ再投稿なしのリジェクトしてくれたのでよかった。自分だけ見る目なかったらどうしようかと、ちょっとドキドキでした。

二度あれば三度あるではないですが、今度はボスからの依頼の下請け。というより、興味あるなら引き受けるよーと聞かれていたので、最初から丸投げのつもりだったか。まあ、査読なんて、自分がすごく気になるテーマじゃなければ、そんなもんだよね。姉妹誌クラスのどっさりしたデータ論文でした。うむ、これは最新情報。勉強にはなる。ざっと読んで、まあいいんじゃないのとのボスの印象でしたが、いやいやこれ基本的な問題が結構あるから、RejectかMajor revisionぐらいだと思いますよと諭します。コメントを下書きして、ボスも納得してくれて、修正してもう一回送る前にチェックしてというから見てみたら、ask がスペルミスしてassになってる、、、スペルミスじゃないから赤線が引かれなかったようで。直して送信して、しばらくするとEditorからのReject決定のメールが転送されてきました。他の2人の査読者も似たような意見で、僕がここまでいうのはかわいそうかなと手加減したところまで書いてある。良かったね、現ボス。1人だけゆるいコメントしなくて。ある意味自分の審美(?)眼が試されているので、自分が査読した論文への他の人の査読結果は結構ドキドキです。

しかしまあーえらくならないと、まともな論文回ってこないんですね。。頑張ります。