Wunderbarな日々

妻子連れ30代生物系ポスドクのドイツ滞在記です。

研究雑話(11)

・続ポスドク探し

三人目の候補者だったオーストリアで学位を取ったドイツ男性は、民間就職ということで、うちのラボのオファーを断りました。残念。ということで引き続きポスドク探し。

四人目の候補者はデンマークで学位をもう少しでとるスイス人。ボス同士は多少の交流があり、関連分野とちょっとは言えるところからの応募は初めて。プレゼンは簡潔でわかりやすく、こちらの研究にも興味をもっていろいろ聞いてくれました。ボスがラボメンバーに反応を聞きましたが、おお、すげーというところはないものの、キャラクターとしては普通で合格点以上という感じでした。オファーを出したところ、受けてくれて、やっと見つかったという感じです。昨年末から探し始めて、見つけて来てくれるまで一年弱でした。まあ、ビッグラボには応募が殺到するのでしょうが、中小ラボはなかなか人材を確保するのが大変で、ボス曰く、どの学会行ってもみんなポスドク募集中だそうです。

ボスの研究費の使用期限延長申請が通り、もう一人ポスドクを雇うことに。まあ、病気に出産に独立にと立て続けに4人のポスドクに辞められたんじゃ研究ところじゃないというのももっともなところで。次にやってきたのはドイツで学位をもう少しで取りそうなイタリア人。ちょっと混みいった分野の出身でしたが、わかりやすくプレゼンにまとめてくれました。業績は文句なしで、今までの候補者の中で一番ハイインパクトジャーナル。「おたくの研究室、ずいぶん長い間ポスドク探してるようだけど、見つからないの?」とボスにSkype面接時に聞いたり、ラボでのプレゼンを終えて、ラボメンバーと喋ってると「そうねえ、ここは私の第一希望じゃないかもしれないね。」なんて言ったりとずいぶん明け透けな性格なようです。バリバリ働きそうだし、こちらからは文句なしといったところでボスはすぐにオファーを出しました。他に取られそうかなと思っていたのですが、なんとオファーを受けてくれることに。。。いやぁ、スムーズに行くときは行くんですね。。。ドイツからドイツの移動じゃ、マリーキュリーもフンボルトも奨学金の申請ができないっていうのでボスも彼女も嘆いていたのですが、雇われポスドクとなったようです。

ポスドク候補者と二人で喋ってると、ボスはどんな人ですかと必ず聞かれるわけですが、「自由にやらせてくれる人だけど、たいしたアイデアやアドバイスをくれる人でもないから、自分で研究が進められてやりたいテーマがはっきりしている人に向いているラボだよ。」と答えるようにしています。あとで聞いたところ、僕より古株のドイツ人学生も同じように答えていたらしい、、、やはりそうか。ハイデルベルクの中なら、ちゃんとした専門家がどっかにいるからちゃんと探せば研究はなんとか進むけど、ボスだけなら何の頼りにもならんからなあとも。彼女はずっと分野外のことを一人っきりでやらされて4年間進捗なしで、ハイデルベルクにいる経験者をなんとか2ヶ月引っ張ってきたらあっという間に進んだ経験があり、恨みつらみもずいぶん溜まっているようです。「指導できないなら学生にやらせるなー。私の時間かえせー。」

何はともあれ、夏休みが過ぎればポスドクが二人増えることになりました。これでラボの雰囲気もどう変わるやら、ビクビクでもあり、楽しみでもありといったところでしょうか。

 

・学会

年取ったポスドクにとっては学会はある程度緊張感があるところで、無能さを晒してしまうんじゃないとか、進捗ないじゃんと思われるんじゃないかとか、パクられちゃうんじゃないかとか。しかし、日本でもドイツでも学生にとっては、やっぱり華やかで楽しいところに映るらしく、ボスが立て続けに二人の学生に学会行ってないでデータ出せといった所、二人ともしょんぼりしてました。「国際学会に行きたい!」というのを餌に、モチベーションを上げたほうがよかったとおもうんですが、、、まあなんせボス自身が学会にあんまり行きたがらない性格で、関連分野の学会にラボで誰も行かないこともしばしばです。さらに問題なのは、いったんそれをやっちゃうと、下が萎縮して、学会いきたいと言ったら怒られるから、本当にいいミーティングだもいきたいと言い出せなくなっちゃうようで。。。うーん。その学生にこの学会すごくいいと思うよと勧めてみたところ、「ボスはあんまり私に学会に行って欲しくないみたいだから、打診するのやめとくわ。」との結論になってしまいました。ボス的にはその場の気分で言いたいこと言ってるだけなんでしょうが、PIの言動は影響が強いようで、まあなんというか、勉強になります。

 

・ハードディスク

ラボの制御用PCが攻撃されて、データが少し飛んでしまいました。普段使いしてないPCは色々危ないねということで、外付けハードディスクを買ってバックアップです。日系企業応援ということで、ToshibaのCanvioの4TBのものをいくつか購入して、NGS用のデータをコピー。ところが、コピーを始めてしばらくするとスピードが突然遅くなる現象が何回も発生。コピーをキャンセルしても書き込みが終わらず、OSの終了もままなりません。原因特定まで行ってませんが、とりあえず、windowsとlinuxから同じハードディスクにアクセス・書き込みしないようにしたほうが良さそうです。windowsのUSBの高パフォーマンス設定がいけないのかもしれませんが。。。

OSが終了できなくてケーブル抜いたりもしてしまったので、完全に落ち度がないとも言い切れませんが、一応ハードディスクの初期不良も疑われるので、メーカー保証に申請してみました。購入から2年間の保証が付いていて、

https://www.toshiba-storage.com/warranty-claims/

上記のサイトからオンラインで申請して、ハードディスクを梱包して発送しました。

大して期待してなかったのですが、ところがどっこい2日後には代替品のハードディスクが送られてきました。おぉー。こりゃ中身一個ずつチェックするのめんどくさいから、クレームがあったものはとりあえず新品送っとけ的な対応のような気がしますね。対応が早くて良かったです。

 

・去る人

上の階のラボの学生が学位取得。みんなでプレゼントやハットを用意してお祝いです。当日になって、ご家族一同がやってきただけでなく、彼氏もいて、さらに彼氏のご家族も。。。そこまで来るのは初めて見るなあ。ハイデルベルク大学の博士審査は公開じゃないので、終わりそうな頃にみんながセミナー室の外の廊下で待ってるわけですが、部屋に再び呼ばれ、審査結果が告げられて、ドアが開いて本人が出てくると、みんなからの拍手をバックにまずは彼氏とハグしながら数秒間キス。。。すげー。その勇気ないわー。次に一人ずつとハグをかわして、スパークリングでお祝い。その後は場所を変えてバーベキューで、ラテンの人たちはずっと踊ってて、彼氏はずっと肉を焼いていて、両家のご家族は言葉少なに同じテーブルに着くいう不思議な会でした。楽しかったですけど。

卒業後はラボをやめ、民間就職を探すようです。研究は楽しかったけど、もっと家族や彼氏との時間や自由な時間を大事にしたいとのこと。第一線で研究し続けるためには、その辺りを犠牲にしないといけないことがわかっていての決断ですが、そういうことをさらっと言える人を日本でほとんど見かけないし、風土もないですよね。仕事ごときに人生振り回されてたまるかということです。彼女は賢かったし、よく仕事したし、優秀そのものでした。そういう人が次々にアカデミアに興味を失ってやめてしまうのは残念ですが、きっとこの間の経験は本人にとってはいいステップになったのでしょう。

 

同じく上の階のポスドクが退職。アメリカでポスドクをしたのちにハイデルベルクでセカンドポスドク。仕事に一途な職人タイプで、土日はいつもいるし、論文の総引用数も2000は軽く超えているし、DFGのグラントもとっていたのですが、歳をとりすぎてドイツでは独立ポジションをゲットできなかったようで、退職となってしまいました。詳しいことは聞けませんでしたが、12年ルールでしょうか。

https://de.m.wikipedia.org/wiki/Wissenschaftszeitvertragsgesetz

それはそれとして、お世話になった皆さんに感謝ということでビールアワーの機会を作ってくれました。今後は日本の理研白眉にも応募したのでその結果に望みをかけることになるそうです。現実は厳しいなあ。研究やらせたらいい仕事するだろうに。。。研究できる機会を貴重に感じないといけませんね。。。